第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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その欲と野心を揺さぶるのに“王”という言葉は十分以上に強力なものであった。
軍に入って初めて行われた野心による行動が、どういった結果になるかは未だ分からない。ロマリアとの一戦が始まった際、同盟関係にあった筈のロマリアとの戦いに反対した砲甲板の兵士たちが反乱を起こした程である。いくら両用艦隊がロマリアの艦隊の倍以上存在するからといって油断はできない。
士気の差は時に戦局を左右する程の影響を与える。現に反乱を起こした砲甲板兵を鎮圧した後始まったロマリア艦隊との戦闘が未だ終わっていない。
通常ならば倍以上の戦力の差があれば精々一、二時間もあればある程度戦局が決定している。しかし、戦闘開始から既に結構な時間が過ぎている今も未だ戦局の行方が見えない。
「……このままでは、あの女がロマリアを灰にするのが早いかもしれんな」
砲撃の音が響く中、誰に言うでもなくクラヴィル卿は呟いた。
向けられる視線の先には火竜山脈に刻まれた峡谷―――“虎街道”。そこには謎のゴーレムと共に虎街道へと降り立ったシェフィールドがいる筈である。
国王直属の女官という触れ込みで乗艦したシェフィールドという女は、一言で言えば不吉な女であった。
女官、と言いながらその姿は古代の呪術師のような闇のような黒いローブに身を包んでおり、常に深くフードを被っていることからどのような顔をしているのか見たものはいないが、僅かに見える口元だけでも相当な美しさが伺い知れた。
だからと言ってシェフィールドが常に身に纏う破滅を思わせる不吉な雰囲気故に鼻の下を伸ばすような輩どころか近づく者さえいなかった。
「ヨルムンガンド、か」
唸るようにその名を呟く。
サン・マロンで搭載した巨大な騎士人形。人間のように甲冑に身を固め、さらには大砲や剣で武装した怪物。噂ではその開発にエルフが関わったと聞くが、成程と納得するだけの迫力と性能があった。
それが十体。
既にシェフィールドが十体のヨルムンガンドと共に地上に降りてから一時間は経過している。妨害等でまだ虎街道は抜けてはいないだろうが、それも時間の問題だろう。あの甲冑人形が振るう剣や大砲の前では、どんなメイジの部隊も城の城壁も意味はなさない。甲冑人形が動く限り破壊は何処までも続くだろう。
それこそロマリアが灰になるまで……。
自分の想像に、クラヴィル卿の背筋がぶるりと震えた。
受けた命令は確かに『ロマリアを灰にせよ』ではあるが、それをそのまま受け取るほど狂ってはいない。そもそも何処の誰が一国を灰にせよ等という命令をそのまま受け取るような狂人がいると言うのか。それに苦労して手に入れた土地が灰になっては、そんな所で王になったとしても何の意味もない。
だが、そ
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