第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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に守られている敵旗艦にまで辿り着く道が、様々な問題により隊列が乱れていることから生まれている。
千載一遇の機会。
そしてその道を行くには他の船では駄目だ。今現在の膠着状態は圧倒的な数の不利を、士気や作戦等により微妙な均衡を保っているのだ。一隻でも崩れればそこから大きく敵側に傾くこともありうる。ならば、唯一敵との戦闘を行っていない船が行かねばならない。
そんな船は旗艦たるこの船しかなかった。
最後の手段とも言っていいほどの作戦であるが、既にその作戦を実行しなければならないほどにロマリア艦隊は追い詰められていた。しかし、いくら旗艦が落ちた際の命令系統が事前に決めているとは言え完璧とは言えない。少なくない混乱が起きるのは必定だが、状況がそれ以外の方法を許してはくれなかった。
命令を下せば、成功失敗問わずこの船は落ちる。
何せ敵の旗艦である“シャルル・オルレアン”号は、現―――否、史上最高最大の船である。船一隻でどうこう出来るような相手ではない。しかし、今この状況ならばこの船一隻の犠牲で何とか出来る可能性が見える。
問題はその船の中に、船員も含まれてはいることだけ。
実行すべき作戦は何も難しいものではなく単純なものである。
爆弾や火薬を詰め込めるだけ詰め込み敵船に体当たりを仕掛けるだけ。
数十メートル級の爆弾だ、いかに強大な船であろうと撃沈は免れない。
自分と仲間たちの命を無視すればの話ではあるが……。
「総員、これより―――」
総司令官が、自分の信頼する部下と愛する船に死を告げようとした―――その時であった。
『―――こっ、後方より高速で何かが接近しておりますっ!?』
甲板の上にある物見台から繋がる伝令管より、物見の船員からの声が司令室に響いた。
「後方から、だと?」
何処からか訝しげな声が上がった。
今、この船の後方にはアクイレイアがある。つまり、後ろからくるものは味方の応援か、回り込んできた敵の増援の二つしかない。しかし、伝令管から聞こえてきたのはそのどちらでもない“何か”であった。
指令官が直ぐさま伝令管を掴み口を寄せる。
「何かとは何だッ!? 報告はハッキリしろッ!!」
甲板上まで繋がる伝令管の金属製の筒がビリビリと揺れる程の大声だ。微かに向こうから押し殺した悲鳴のような声が聞こえてきた。
「―――一体何が見える」
荒げていた声を落ち着かせて再度問う。何かを破壊しかねない怒声ではないが重みを持った声であった。その声に少しばかり落ち着いたのか、喉に詰まったかのような奇妙な音が何度か続いた後、混乱は収まったようだがそれでも未だ興奮した声が伝令管から届く。
『っ―――ひ、光です。銀色に輝く光がこちらへっ―――なっ!?
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