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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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ながらも、セイバーは苦しげな顔を一つも見せる事なく考えを巡らせていた。
 ルイズの身を守る上で重要な最大戦力の一つであるセイバーを引き離す理由についてセイバーは考え続ける。
 
 例えばルイズを殺害するため。何らかの理由でルイズの存在が邪魔となったことから、戦争を利用して暗殺しようとしている。
 
 例えばルイズを誘拐するため。他国の貴族であるルイズを自由に操る事が出来ないことから、表向き戦死したことにして誘拐し操り人形にしようとしている。

 どれも可能性はあるが、推測でしかない。
 あっているかもしれないし、間違っているかもしれない。
 現状ではいくら考えても結論を出すことは不可能。

 ならば、どうする?

 ルイズの身を第一とここで反転してルイズ達の元へと向かうか?
 それとも、余計な勘ぐりだと、ルイズ達は大丈夫だと信じてこのままロマリア艦隊へと向かうか?
 どちらも正解であり、間違いでもある。
 ルイズの身の安全を優先にすれば、ルイズの命は守れるだろう。しかし、その場合ルイズ暗殺がなければ唯の命令無視でしかなく、今後の行動にかなりの制限が掛かる事になる。
 ロマリア艦隊の援軍を優先すれば、もしルイズの暗殺や誘拐が目的であった場合は、そこで全てが終わってしまう。
 進むのも、戻るのも正解であり間違いでもある。
 援軍に向かう戦場で相手するのは、百を超える艦隊。それを倒さなければ応援に向かう事すら出来ない。
 敵は強大で数が多い。例えセイバーといえど、ビルのような巨大な建築物を百隻もどうするかは出来ない。戦艦とはいえ多くの材料が木材であり、それに“固定”の魔法が掛けられただけ。セイバーならば、例え戦艦相手だとしても勝つこと自体は不可能ではない。しかし、ビルと同じ大きさの船を破壊するには相当な時間が掛かる。
 問題はそれまでに掛かる時間。
 それを解決するには速度と破壊力が重要だ。
 確実に、かつ迅速に敵を無力化する方法……。


 そのような方法は―――
 

「―――躊躇う時間はない」

 セイバーの瞳が強く光った。
 手綱をこれまで以上に強く握り締める。竜の力でも切れないようになっている手綱が、ミシリと悲鳴を上げた。主人の纏う雰囲気が一段と強くなり、それを察した騎竜が怯えるように一つ身震いする。その細かな震えを、竜の背に抱きつくような体勢で感じたセイバーは、胸の奥から湧き上がる熱を吐き出すように深く息を吐いた。
 
 落ち着け。
 何も初めてというわけではない。

 自分に言い聞かせながらセイバーは自身が駆る竜に意識を向ける。
 その姿形だけでなく、内臓から流れる血の一滴までにまで集中する。自分の身体と竜の身体が一つに溶け合うかのような想像(イメージ)を強く抱く。竜の鱗が
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