第十四章 水都市の聖女
第八話 聖竜と乙女
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ばシャルル・オルレアン号を除き両用艦隊の中でも随一を誇る船がクッキーのように砕けて落ちていく。十を数えないうちに二隻もの船が落ちた。戦争をやっているのだ、轟沈する船があっても何らおかしくない。だが、その落ちた船がおかしかった。バーミリア号もゴドヴィル号もそう簡単に落ちるような船ではなく、何よりどちらもロマリア艦隊の攻撃の範囲には入ってはいない。
一体何が起きているのだと混乱と怒りが渦を巻き、思わず甲板を蹴ろうと足を上げた時―――
―――ドッ、ドッ、ドオオオオォォォォォォンッ!!!
これまでで一番の揺れがシャルル・オルレアン号を襲った。
まるでシェイカーを振るように船体が上下に激しく揺れ、身体が何度も宙へ浮き床に叩きつけられるが続き痛みと混乱で霞む視界の中、クラヴィル卿の目に銀色の輝きが映った。
「―――銀、色の、光?」
甲板にしがみつきながら顔を上げたクラヴィル卿の視線の先には、青い空に銀色の輝きが見えた。硝煙や船が砕けた破片が浮かぶ青空に、銀色の輝きが線を描いている。巨大な見えない何かが線を引くように描かれる銀線の先には両用艦隊の船の姿が。
「危な―――」
思わず声を上げるクラヴィル卿。
向けらる先は両用艦隊の船ではなく謎の光へ。
両用艦隊の船の大きさに比べれば、銀色の光はあまりにも小さすぎるからだ。傍目から見れば鼠が猫に襲いかかると言うよりも、蚤が猫に襲いかかっているかのようで。このままでは銀色の光が砕けてしまうと銀色の輝きを目で追っていたクラヴィル卿の目と口が、次の瞬間ぽっかりと円を描いた。
「馬鹿―――な」
空を轟かせる爆発音と衝撃の中、クラヴィル卿は食い入るように銀色の輝きを見つめ続ける。
船を貫き新たな獲物を探すかのように空に走る銀線を見上げる。
「あれは……一体……」
紙を矢で射るかのように次々に両用艦隊の船を貫き砕きながら空を進む銀光を見つめていたクラヴィル卿は、気付けば立ち上がり銀色の輝きを追うようにふらふらと舷縁の前にいた。
まるで誘われるかのように舷縁から身を乗り出すように身体を出したクラヴィル卿が、“遠見”の魔法で銀光へと目を凝らす。銀色の輝きにしか見えなかった姿が、クラヴィル卿の瞳に辛うじて像を成した。
その余りの速度故か全体的にボヤけているが、長い首に巨大な翼が確かに見える。
その姿形からして、それが何なのか直ぐにクラヴィル卿は気付く。
「―――銀色の、竜」
それは、銀色に輝く竜であった。
大きさは通常の風竜の大きさであろう。
しかし、それは見たこともない竜であった。太陽の光を受け、その身体が銀色に輝いている。
「何と、美しい」
思わず漏れたとばかりに感嘆の吐息と共に呟かれた言葉
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