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美しき異形達
第三十八話 もう一つの古都その七
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「そのお力で」
「日本を。私達を守ってくれているのよ」
「そのすげえ大仏さんと四天王にか」
 薊は笑顔で進みながら言った、歩いているうちに遂にその東大寺が見えてきた。巨大な大仏が中に鎮座しているだけあって相当な大きさだ。門のところには鹿達もいる。
 その鹿達も見てだ、薊は門の前でこんなことを言った。
「ここってお寺なのにな」
「うん、神様の使いも普通にいるのよ」
「流石に中には入らないよな」
「うん、そうだと思うわ」
 向日葵も鹿達を見ている、その東大寺の前でも我がもの顔でいる彼等を。
「流石に帰ってもらってるのよ」
「お寺の中にはか」
「ここの鹿って普通にお家の中にも入って来るらしいけれど」
「本当に傲慢な連中なんだな」
「それがこの子達なのよね」
 やはり鹿達を見つつ言う向日葵だった。
「奈良の鹿なのよ」
「ひでえ奴等だな、おい」
「だから奈良県民には愛されていないみたいよ」
「だろうな、まあお寺のところにもいるんだな」
「そうなの、普通にね」
「宗教の垣根超えてるな」
「日本じゃ変わらないからね」
 特に、といった口調だった。日本では仏教も神道も対立せずに共存共栄している。それはこの奈良でも同じなのだ。
「どっちの宗教も」
「そうなんだな」
「そう、それでね」
 そのうえでだというのだった。
「そうしたことは考えなくていいのよ」
「そうか」
「この子達教会の前でもいると思うわ」
「本当に宗教に垣根ってないんだな」
「日本、特にこの奈良と京都と鎌倉はね」
「うちも学校もそうか」
「八条大学の宗教学部はね」
 あらゆる宗教を学べる、仏教の各宗派、神道、キリスト教、天理教の聖職者の資格も得られる程だ。それぞれの宗教施設まである。
「そうした場所よ」
「別に宗教が違っても喧嘩しなくていいしな」
「そんなの馬鹿なことだしね」
「向日葵ちゃんも神社行くしな」
「普通にね」
 寺の娘でもだ。
「だからね」
「それで、だよな」
「そう、じゃあ今からね」
「入るか、東大寺」
「そうしましょう」
 こうしてだった、一行は東大寺に入った。そして。
 その巨大な大仏を観る、本堂の中にあるそれはとてつもなく大きい。薊はその仏像を見上げつつそのうえで言った。
「いや、実際に観るとな」
「大きいでしょ」
「無茶苦茶大きいな」
「こんな大きいの作ったのよね」
「昔の人はな」
「私は子供の頃から観てるけれど」
 奈良県民ならではの言葉だ。
「最初はふーーん、で済んでたけれど」
「今は違うんだな」
「歴史の授業で教えてもらって」
 それで、というのだ。
「凄さがわかったの、この仏像の」
「そうだったんだな」
「興福寺の阿修羅像とか。八部衆の像も」
「ああ、あっちも
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