第五話 『脱出』
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室から出た俺たちは、ひとまず外を目指すことにした。ひどい騒ぎだったからか、廊下にも、教室にも色々なものが散乱している。車を使って移動できれば良いのだが、あいにく車を運転できる人間はここにはいないので、徒歩で移動するしかない。などと考えながら歩いていると、ふととなりから声が投げ掛けられた。
「ねえ、雲母。あいつらはいったいなんなの?まるでバイオ○ザードのゾンビみたい」
優衣架のやつが、ちゃっかり著作権に引っ掛かりそうなことをたずねてきやがった。やめとけバカヤロー。
「たしか、アラビア半島の方で流行ってた感染症……らしい」
「アラビア?なんでそんなの日本に流行してんのよ。そもそも人間がゾンビみたいになるなんて聞いたことないわよ?」
いつになく真面目な返答をされたので、少々驚きながら言葉を返す。
「さ、さあな。それを俺に聞かれても……陵太、なんか考えられるか?」
「そうだな……アラビアから送られてきた物資にウィルス付着してくる。もしくは旅行や仕事でアラビア半島にいった人間が感染し、潜伏期間をへて日本で発症すると言うことは考えられる。それにその感染症は、狂犬病の一種だってニュースでは伝えてた。それが本当なら、ゾンビみたいになるのもうなずける」
相変わらず冷静に受け答える陵太だが、辺りを警戒している感じが伝わってくる。昔はあんなに弱かったのに、いつのまにか頼れるやつになってやがる。などとのんきに昔を思い出しているときだった。
「止まれっ」
陵太の小さくも鋭い声が、辺りを緊迫した空気に包み込む。
「ど、どうした……?」
千歳がたどたどしく聞くと、
「静かにっ……奴等がいる」
陵太のその声に、俺は窓のガラス越しに曲がり角の向こうを確認する。
「ッ!マジかよ……」
そこには、通路に無数に広がる感染者たちの群れだった。その容姿はおぞましいもので、裂けた腹部から腸があふれ出したものや、腕が関節からちぎれて無くなったもの、何があったのか下顎が無くなっているものなど、種類は様々だ。
「こっちは無理そうだな陵太。迂回しよう」
「ああ、そうしよう」
ルートを変えるべく、後ろへ下がろうとしたときだった。
ガキン!
「……ッ!」
顔を青ざめさせながら後ろを振り向くと、外れて落ちた窓ガラスを、千歳が踏みつけてしまっていた。
「うわ!ご、ごめんなさい!」
皆に凝視されてしまったせいか、てんぱって大きな声を上げてしまった。
「バカッ……!大きな声をだすな……!」
陵太が千歳の口を塞ぎ牽制するが、時すでに遅かったようだ。俺たちの姿を見つけたらしい感染者たちが、群をなしてこちらに走り出した。
「不味い!みんな逃げるぞ!」
悲劇は終
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