明日への翼
01 RAIN OF LOVE
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いない。
風にポニーテールが揺れていた。
「……泣いていいんだよ。いま泣いておかないと後でもっと辛くなるよ」
「姉さん、私ね……螢一さんと……約束していたんです」
「約束?」
「いつかこんな日が来る。お別れの日が来るって。……でも、さよならじゃないから。またいつかきっと会えるから。その時は顔も名前も違うけど、きっと今の記憶もないけど、魂は……魂に刻み付けた記憶だけは……ずっと……だから泣かないって」
ウルドは言葉を捜すが何も思いつかなかった。
妹の肩をそっと抱いてやる。
「……でも、ごめんなさい。螢一さん。約束、守れなかった……」
雨が降ってきた。
叩き付けるような土砂降りの中で、抱きあったまま、二人の女神が泣いていた。
ウルドは、泣きじゃくるベルダンディーの肩を抱いていたが、やがて彼女の身体に異変を感じた。
こんな簡単な事はじめに気がつくべきだったかも知れない。
だが気がつかなかったとしても誰も責める者はいないだろう。
ベルダンディーの下腹部に小さな神気の乱れ。
「あなた、まさか!」
姉の驚きに満ちた問いかけにベルダンディーは頷いた。
「螢一は知っていたの?」
「今夜、お話しするつもりでした」
「そう……」
ウルドは目を伏せた。
知らせを聞いて釧路から彼の両親が飛んできた。
葬儀が執り行われた。
喪主はベルダンディーが勤めた。
鷹乃と桂馬に気を使って、ベルダンディーははじめ躊躇していたが、二人にどうしてもと言われれば断わる術はなかった。
女神が喪主をする葬儀なんて人類史上始めてだろう。
「お姉さまどうするつもりかしら」
スクルドは告別式を抜け出して裏庭の池のほとりに佇んでいた。
螢一がいなくなってしまった以上、地上界に留まる理由は何もないのだ。
「スクルド」
「あれ、帰ったんじゃなかったの?」
随分な御挨拶だが仙太郎は気にも止めなかった。
「うん、どうしても気になる事があって、戻ってきたんだ」
彼は何時になく歯切れが悪い。
「なあに?気になる事って」
「お兄さんが死んじゃってベルダンディーお姉さんはどうするのかなって」
「判んないわよ」
「もしかしたら、僕の知らない外国に帰っちゃうんじゃないかな」
「判んないったら!」
「そしたら、スクルドも一緒に帰っちゃうの……かな」
スクルドの瞳が涙で潤んでいる。
「仙太郎。どんなに遠く離れても生きていればまた会う事だって出来るわ。でも、死んじゃったらもう会えないんだよ」
大粒の涙が頬を流れ落ちていた。
「ごめん」
「ううん、謝らなくちゃいけないのはあたしの方」
翌日の事だ。
夜も更けて日付がもう少しで変わる時間。
小洒落たバーのカウンターで紗夜子が酒を飲んでいた。
かなり
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