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英雄は誰がために立つ
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切っ掛けになったとはいえ、『クロム先生』の助力が無ければ会談にまでこぎ付ける時間も、相当掛かっただろうからね」

 ルオリア・C・クロムエル。

 人間かはたまた人外かは不明の上、どの様な方法でかも不明だが、世界中の様々な神話体系の異界などにも入界許可を得られている程の、途轍もない実績と信頼を勝ち取っている賢人。

 紺色の短髪に髪をかき上げて、眼鏡をかけて何時も笑みを絶やさない痩せ細った男性だ。

 更には聖書などの影響により、民間の伝説レベルにまで落ち込んだ神々の信仰の低さのケアの実現、各神話の不和の仲介なども精力的に活動している傑物だった。

 因みに愛称が、『導師ルオリア』か『クロム先生』と呼ばれている。

 「大丈夫なんですか?今回の会談はまだまだ、きな臭い動きが有るように思えます。そんな会談で、もしクロム先生に何かあれば三竦みの会談の破綻だけでなく、各神話勢力からも突っ込まれますよ?」
 「そうなんだろうが、これは先生自身からの希望でもあるのさ。でももし何か起こった場合は僕らも先生を全力で守るし、君の警備への依頼もその当たりが有るんだよ?」

 その言葉に一拍置いて、取りあえず了承する士郎。

 「判りました。では今日はこの辺で」
 「ああ、夜分遅くのこんな時間に悪かったね?ゼノヴィア君には気づかれていないかい?」
 「ええ、今は勉強中でしょう」
 「彼女も熱心だね」
 「新しい生活に付いて往こうと、慣れようと必死なんでしょう?」

 シロウの言葉に成るほどと、呟くサーゼクス。

 「じゃあ、今度こそお休み」
 「はい、お疲れ様です」

 その言葉と共に士郎は、通信を切った。


 −Interlude−


 次の日の夜。

 士郎は定期的に、夜のオカルト研究部の活動時間に来ていた。
 そして今、士郎がいるのはギャスパーの引きこもり部屋であった――――現在もギャスパーの引きこもり部屋の外の廊下の壁に、背中を凭れ掛かける様に一誠と祐斗とギャスパー(3人)の話を盗み聞きしていた。

 (ハァ、あいつは全く・・・。どんだけエロに生涯を懸けているんだか・・・)

 そこで、そろそろ話を区切れそうだったので、祐斗に察知できるようワザと気配を露わにする士郎。

 「ん!?」
 「如何した木場?」
 「そこで隠れている人、バレバレですよ」
 「へ?」

 何かを察知したかのように、直に反応して不審人物へ呼びかけた。
 その呼び声に待ってましたと言わんばかりに、のそっと直に出て来る幻想殺しの格好をした士郎。

 「幻想殺し!?」
 「は、はわわわわ!?だ、誰ですかぁぁぁ!?」

 まるで気づけなかった一誠とギャスパー(2人)は、突然の登場に驚く。

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