縋るモノに麗しさは無く
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の群れは昏い光を宿して怨嗟を伝える。
大きな大きな感情の渦だけが、その場を支配していた。
彼はじっと彼らを見つめ、どれだけ白蓮への想いが大きいのかを読み取って行く。
そして……やはり不敵な笑みを浮かべて、なんのことは無いと首を振ってから口を開いた。
「分かってねぇなぁ……お前ら、全然分かってない」
質問の答えは紡がれなかった。いつも通りに、秋斗は問われた答えとは別の事を話に上げる。
何の事だと問いかけが飛ぶ事は無かった。
静かに紡がれた声に反発することなく、白馬義従達は続きを待った。
幾分の沈黙の後に、彼は白馬義従ではなく……袁紹軍の兵士達に顔を向けて声を放つ。
「お前らの理屈で言うと、こいつの頸を落とす俺は袁紹軍の兵士達とか顔良や文醜に殺されなきゃならんのだが?」
「な……」
「曹操殿が来るまで官渡は俺が預かってたし、罠を張るように指示したのも俺だ。間接的か直接的か決めるのは袁紹軍が勝手にすればいいが、追い詰めた一端には俺の策もある。顔良を捕えるように張コウを向かわせたのも、文醜を捕えたのも俺なんだからよ。徐州で袁家の被害が増えたのは俺の大事なバカ共のせいでもあるだろ? ほら、袁紹の絶望の原因は俺にもある、なら……俺は死ななきゃなんねぇよなぁ?」
正しく、絶句した。
袁紹軍の兵士も、白馬義従も彼の言に思考を奪われる。
憎しみで駆けた彼らが怨嗟の対象の不幸を願うなら、同じように主を奪われる兵士達に彼は殺されなければならない。
連鎖していく憎しみの鎖はそうして途切れる事が無い。最初に誰がやったか等では無く、奪われた側は奪った側を憎まずにいられない。
なんでもない事のように正論の屁理屈を並べて、彼は怨嗟に染まった兵士達を嘲った。
「……つまり俺に死ねと、お前らは言ってるわけだ」
「ち、違ぇ! そうじゃねぇ!」
誰かが声を上げた。暴論だと思ったのかもしれない。屁理屈だと思ったのかもしれない。
この場で彼に反発する事など、意味を為さないというのに。
「何が違う? お前らだけが憎しみを抱いてるわけじゃねぇだろうに」
昏くて重い声は彼らの心を乱していく。
普通なら聞き流すような言葉も、彼らの主が認めた友だから……頭にねじ込まれていくしかなかった。
「お前らは殺した。俺も殺した。奴等も殺した。こいつも殺した……誰も彼もが殺し合いをして来た。こうやってコロシアイを繰り返して繰り返して……誰も笑えない世界が出来上がる。やったらやり返されるんだ、当然だろ? お前らも誰かに憎まれてるし、お前らの愛する白馬長史でさえ、誰かから怨まれてんだよバカ野郎共」
は……と彼は一息ついた。
――綺麗事の正論は吐きたくないが、此処でこういう言い分も出しておかないと後々
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