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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第8話「考えるな、感じろ」
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ァ!戻ってこいやァァ!!」
 銀時の声に呼応するかのように、双葉の手は自然と伸びていく。
 だが不意に生まれた咎める思いがその手の動きを止めた。
 自分にあの手を掴む権利はあるのかと。
――だめだ。自分から突き放して、また手離した……。
――だからもうあの手は掴めない……。
 そんな気持ちに溢れた双葉の手はどんどん下がってゆく。
 そして銀時との距離も少しずつ離れ、堕ちていく。

「馬鹿野郎ッ!!」

“ガシャン”

 頭ごとぶつけて叩かれた『壁』にヒビが入る。そして直後に大きな音を立てて崩壊した。
 そのまま突進するように飛びこんで、双葉の腕を掴み取った。
 そして静かに抱き寄せて兄は妹に語りかける。

――バカヤロー……俺だっておんなじなんだよ。

 狂気の苦しみに堕ちた妹を手離してしまった兄の悔やみ。
 みんなと楽しむことをできずにいた妹の憧れ。

 不思議と銀時と双葉の想いがお互いに通じ合う。
 『無』の世界で銀時に聞こえてきたのは、双葉の『声』だった。
 最初は声がどこから聞こえるのかわからなかった。
 だが双葉のことを強く想えば想うほど、どこにいるのか感じ取れた。
 互いの場所を知り、互いのココロが聞こえること。
 それが【タマシイの共鳴】。

<i2922|26801>

――何がしてェんだ?
――え?
 何を聞かれたのかわからず、思わず聞き返す。
 戸惑う双葉を見て、銀時は一度聞き直した。
――トランプとか花札とか。……最初っからそう言えよ。
――……だって……
――まどろっこしいんだよ、テメェは。
 そう文句を言いながら銀時はおでこでコツンと双葉の頭を軽く叩いた。
――兄者……すまない……
――あん?
 こぼれ落ちる謝罪。心当たりがなく首を傾げる銀時に、双葉は静かに言った。
――……私が……みんなを……まきこんで……
――それは俺じゃなくて、新八達(あいつら)に言え。テメーの口でな
――……ごめんなさい。
 ほんのりと紅潮した頬で双葉は静かに兄に謝った。
――で、何がやりてェんだよ?
 聞かれるのはささやかな望み。
 眼を伏せて、しばしの沈黙のあと、双葉は答えた。
――……大富豪。
 他愛ない遊びを口にした妹に、銀時は「わかったよ」と苦笑した。
――それからよォ、双葉。何かしてェことがあんならちゃんと言いやがれ。
――……駄目だ……私には……そんなこと許されない……。
――誰がやっちゃいけねぇっつった?そうやって何でもかんでも抑えこんでたら、テメーの道見失っちまうぞ。テメーは自分(テメェ)のやりてェことやっていいんだ。
 銀時の言葉に、双葉は瞳を閉じて、そっと彼に寄り添った。

 妹を腕の中に包んで、銀時は思う。
 今度は永遠に
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