第8話「考えるな、感じろ」
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に返ってくる。
高杉と同じ道を歩むと決めた時、もう兄と出会うことはないと思っていた。
なのに、また一緒になれた。
兄といれば思い出が増えていく。
鍋の肉をとり合ったり、些細なことで喧嘩をしたり、皆で遠出をしたりと。
それがどれだけ幸せなことだったか、どれだけ望んでいたことだったか。
そのはずなのに、あの時差し出された手を離してしまった。
過去の衝動に押されたとはいえ、離してしまった事実は変わらない。
それにこうなったのも自業自得。素直に納得できる。
仙望郷の正体を知っておきながら、それを隠して兄や新八達を巻きこんだ。
『旅行』というものをただ楽しんでみたかったという、もう一つの理由で。
けど結局駄目だ。
あの場には誰一人笑っていなかった。これじゃ意味がない。
あの血の海で思い知ったはずなのに、同じ事の繰り返しだ。
――本当に自分勝手なことばかりだな。
だから永遠にこの闇の中を彷徨い続ける。
それが双葉の運命だ。
例え、この先現世に戻れる扉があったとしても……
――ああ、わかってるよ。自分から手を離したんだ。
――だからもう、戻れない。
悠然と浮遊する身体に迫りくるものがある。
黒く、淀んだ何かが双葉の身体を覆っていく。
そして少しの時間もかからないうちに、双葉は黄泉の闇に溶けた。
* * *
『あの世とこの世の境』、『異界の深淵』、『黄泉の狭間』。
いくつもある呼び名はどれも似つかわしい。
底なしの深淵に広がるのは、完全な『闇』のみ。
視覚と聴覚と嗅覚、皮膚感覚すらもすっぱりと抜け落ちている。
まるで夢の中にいるようだ。
現にこの空間が幻なのか、本物なのかさえ区別がつかない。
だが詮索する思考すら次第に薄れてゆく。
考えなくてもいい、と。そんなことをしても無駄だ、と。
なぜならここは何も存在しない『無』の世界なのだから。
「―――」
「……」
「――ば―」
「……」
「双葉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
――兄者!?
完全なる『無』の世界。
そこに響くのは一つの声。
――どうして……。
底なしに堕ちた双葉が見上げる先には、絶叫を上げる銀時の姿があった。
いるはずのない兄の姿を、双葉は口を開けたまま半ば呆然と見ていた。
一方の銀時は悠然と浮遊する妹の姿を見つけ安堵する反面、別の焦りを感じていた。
双葉と銀時を阻むようにしてそびえる透明な『壁』。
それは深淵と狭間をはっきりわけており、兄妹の再会を邪魔していた。
それでも銀時は『壁』に拳をぶつける。何度も何度も。
だが幾度衝撃を与えてもびくともしない。『壁』は銀時を嘲笑っているかのようだった。
「双葉
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