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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第8話「考えるな、感じろ」
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から手を離した……?
 離れたい理由があったのか、それともやはりただの気のせいか。
 どっちにしろ、双葉は黄泉に堕ちてしまった。手離してしまった。
 だからもう……。
「ちげェ」
 まだ間に合う
 アイツは……双葉は身を張ってお岩に立ち向かった。
 だから今度は……

* * *

 何もない。
 暗黒の『無』の世界。
 ゆらゆらと彼女はその空間をさ迷っていた。

――馬鹿だな……。
 幻想だった。
――ココに来れば会えると思ったのか。
 たびたび襲ってくる記憶の衝動。
 それは今日に始まったことじゃない。
 いつからか。
 もう随分昔からか。
 そんな錯覚さえ抱くようになった。
 ただこれだけは断言できる。

 過去の光景が目の前に広がる。

 銀髪を血に染めて『銀桜』と呼ばれる女。
 侍も天人も血にまみれてゆく屍の残骸に満ちた戦場。
 そこに轟くのは艶めかしい笑い声。

 草原の中で昼寝する子供たち。
 寺子屋で学びを受ける児童たち。
 それを優しく見守るのは学びの恩師。

 けれどそれはもう逢えない人。

 過去の光景は連鎖的に広がってゆく。それは日に日に増して押し寄せる。
 どうしてこんな夢のようなモノを見るのかわからない。
 そんな過去の衝動が双葉を駆り立てた。
 気持ちだけが先走って、黄泉の門へ飛びこんでしまった。
 だが、わかっていた。
――ココに来たって会えるわけがない。
 『もう会えない。もう会えない。……もう会えない』
 わかっているのに、どうしても抑えられなかった。
 そして双葉は自嘲気味に口を歪めた。

* * *

【タマシイの共鳴】
 なんのことだがさっぱりわからない。
 だが双葉は唯一血の繋がった妹。大切な家族だ。
『もう誰も失いたくない』
 かつて戦場を駆け抜けた銀時の中に芽生えた想い。それは今も心の奥底にある。
 この想いは妹に届くだろうか。その前に妹はどこにいる。
――見つける?何もねぇ世界(トコ)でどうやってだ?
――いんや。必ず見つけてやる。
――双葉(アイツ)はたった一人の『妹』だ。

 そうして銀時はゆっくり瞳を閉じた。
 すると……

『―――』

「!?」

* * *

 銀時の周りはいつも笑顔で溢れてる。
 どこに行こうが、何をしようが、そこにあるのは笑顔だ。
 誰もが笑っていた。憎まれ口をこぼしても、みんな笑ってる。
 無論、そこに双葉もいた。いつの間にか表情が緩んでることが多くなっていた。
 それはかつて自分が夢見た光景だった。

『貴様は己がどれだけ恵まれているかわかっていない』

 お岩に向けて放った言葉。
 それはそっくりそのまま自分
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