第三章
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交差するその瞬間にだ、獣の下に潜り込み。
その心臓のところに突きを入れた、その一突きでだった。
獣を倒した、そのうえでキメラの羽根も手に入れてだった。
海にも潜り全ての薬の素を手に入れた、それからだった。
彼はその素全てを持ってアンナのところに行った、そうして。
その素の全てをカウンターに座る彼女に差し出してだ、こう問うた。
「これでいいな」
「ええ、全部揃ってるわ」
「それでその素を調合してだな」
「とっておきのお薬を作るわ」
こうゲルマンに言うのだった、彼のその顔を見ながら。
「それでね」
「それで?」
「実は言い忘れていたことがあったけれど」
「もう素はないよな」
「それはもう全部よ、ただね」
「ただ、か」
「あんたには一週間後またうちに来て欲しいのよ」
この店にというのだ。
「そうして欲しいのよ」
「一週間後か」
「いいかしら」
「また仕事の依頼か?」
トレジャーハンターとしてだ、ゲルマンはまずはこう考えた。
「それでか」
「あっ、それはね」
「それは?」
「その時になればわかるわ」
普段は歯切れのいい喋り方のアンナだがこの時は違っていた。その歯切れが今一つでしかもゲルマンから視線を逸した、そして。
そのうえでだ、こう彼に言うのだった。
「一週間後、絶対に来てね」
「絶対にか」
「そう、絶対によ」
こう念押しもするのだった。
「わかったわね」
「何かあるのか?」
「あるから来て欲しいのよ」
この時の言葉は切実なものだった。
「いい?絶対によ」
「何か気になるな」
ゲルマンもアンナのそのいつもと違う様子におかしいとは思った、しかしこの時はおかしいと思いつつもだった。
思うことは問わずにだ、こうアンナに言った。
「まあいいさ、一週間後か」
「その時に来てね」
「じゃあな」
「ええ、また一週間後ね」
とにかく念押しするアンナだった、そしてだった。
ゲルマンはアンナの店を後にして次の依頼を果たした、そうして一週間を過ごしアンナの店に行ってだった。
そのアンナにだ、強い声で問うた。
「来たぜ」
「ええ、来たわね」
アンナはそのゲルマンに確かな声で返した。
「よく来てくれたわ」
「よくか」
「ええ、よく来てくれたわ」
いつもと違いだ、彼が来たことを喜ぶ顔と声だった。
「この一週間心配だったわ」
「心配だったのかよ」
「そう、心配だったから」
それでというのだ。
「よかったわ、来てくれて」
「何か様子がおかしくないか?」
ここで遂に言った彼だった。
「御前いつもと違うぞ」
「違うって?」
「本当にどうしたんだよ、この前から」
「そ、それはね」
問うゲルマンにだ、アンナは狼狽で返した。
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