三十六話:最強の骸殻能力者
[9/9]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
てあんなに面倒くさい性格を持っているんだな。まあ……思い出してみると過去を選ぼうとしていた俺はあんな感じだったかもな。俺はそこまで考えて立ち上がり最後に優しく黒歌に口づけをする。
「愛しているよ……黒歌。だから―――君は生きていてくれ」
それだけ言い残して病室から出て行く。本当は分かっている。ヴィクトルは俺がフル骸殻になったとしても倒せる可能性は低いんだ。まともに戦えば間違いなく俺が死ぬ。だからもう、黒歌とは会えないかもしれない。でも一緒に居れば黒歌どころかみんなも死んでしまう。
それだけ、“ルドガー”って人間は出鱈目なんだ。今のみんなじゃ手も足も出ない。
そう言えば、みんなには色々と伝えないといけないことがあったけど……しょうがないか。
俺と関わらなければ特に必要のない知識だ。俺の過去なんてその程度のものだ。
少し感傷に浸りながら病院の外に出ると月光に照らされるダークカラーの銀色の髪が見えた。隣には中華風の服を着ている男と紳士的な風貌の眼鏡をかけた男もいる。
………全部お見通しってわけか。
「ルフェイちゃんはどうしたんだ? アーサー」
「これ以上危険にさらすわけにはいきません。私が置いてきました」
「それは、お前もだろ」
「あいつは確かにヤバいけどよぉ。戦うのが俺っち達の生きがいなんだ。
それに……ダチを見捨てるほど薄情じゃねえよ」
「美候……」
美候の言葉に思わず胸が熱くなる。俺って……本当に周りの人間に恵まれているよな。
ちょっとばかり不幸でも気にならないぐらいいい奴らばっかりだ。
「あなたこそ、いいのかしら? 辛いんじゃないの、彼女さんと離れるのは?」
「辛いけど……大丈夫だよ、ヴァーリ。それに……」
「それに?」
「約束より……大切なものがあるんだ」
だからこそ、俺は黒歌から離れる。それが彼女を傷つけると知っていても。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ