三十六話:最強の骸殻能力者
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情であった。そして黄金の時計を取り出し構える。それを見たルドガーは直ぐにまだ、傷を負っていない仲間達に逃げるように伝える。ヴィクトルは無力化した敵までは攻撃しない。
そうでなければ確実に息の根を止めているはずだ。それは相手が自分だからこそ分かることだった。そしてルドガーが最も恐れていることは自分の最愛の人、黒歌が傷つけられることだ。下手をすれば死んでしまう、ヴィクトルがやろうとしていることはそれほどの事だ。
「無駄だ……最強の骸殻能力者から逃れられると思うな」
ヴィクトルの体から溢れ出る炎と強烈な光が辺りを照らし全てを飲み込んでいく。
そして、全ての光が失われた後に立っていたヴィクトルの姿は頭に至るまでの全身が鎧の様な骸殻に包まれ、本来であれば金色であるはずの部分はまるで殺してきた兄と父、そして仲間達の血のように赤く染まっている。
かつてルドガーと戦った時は幾多の戦いの果てに骸殻はボロボロになっていたが
今のヴィクトルの骸殻には傷一つ、付いていない。一切の能力の劣化は無い。
そこにいるのは名実共に―――最強の骸殻能力者なのである。
「なんて力……こんなの勝てるわけがないわ」
「こ、怖いです」
ただ立っているだけにもかかわらず、まるで大気を揺るがすがごとく伝わって来る力の波動に恐れをなすリアスとアーシア。恐れをなしているのは何も二人だけでない、アーサーや美候、さらには魔法使いの相手をしているためにこちらに来たくても来れないので遠目で見ているヴァーリなどの戦闘狂でさえ、あれは戦ってはいけない存在だと本能が警鐘を鳴らしているのだ。そして全員がまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっている中ヴィクトルが動き始める。
「ゼロディバイド!」
「にゃっ!? 体が!」
「ひ、引き寄せられていきます!」
警戒してヴィクトルから距離を取っていた黒歌とルフェイは突如放たれた紫色の重力弾によりルドガーのいる一か所に寄せ集められていく。黒歌とルフェイだけではない、未だに傷を負っていなかったリアスとアーシアもだ。ルドガーは次にヴィクトルがしてくることを察知してゼロディバイドにより身動きがとりづらい中、懸命に四人の前に出て盾になる。
そうでもしなければ間違いなく四人は死んでしまうからだ。
「知れ!血に染まりし…完全なる…骸殻の…威力を!」
無数の槍がルドガーとその後ろにいる四人に降り注ぎ、その肌を切り裂いていく。
ルドガーも必死に撃ち落とそうとしているが相手の方が、圧倒的に威力が高くそれも出来ない。それどころか、骸殻の力を上げる暇すら与えられない。そのことにルドガーは出し惜しみなどせずに自分もフル骸殻になっておけばよかったと後悔するが後の祭りであ
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