幼年期編
第9章
あかいあくま
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
猫のような悪戯っぽい笑顔を浮かべると士郎に水を向ける。士郎も凛の意図を察したのか苦笑気味だ。…よく見ると頬が引きつっているが。
(あれは人をからかう気満々の時の顔だよなぁ…。凛ちょっと本性がでてるぞ)
過去その一番の被害者が士郎なのだし防衛本能が働くのも当然というものだろう。…もっとも士郎をからかった場合ほぼ確実に凛も巻き込まれて自爆に近い形になっていたのだから、凛にとっても士郎にとっても恥かしい記憶なのだが。
「う〜ん、でもやっぱり美琴の料理のほうが俺好みだな」
「…ありがと当麻。あんたの味覚に合わせて調理してるつもりだからそのせいかもね」
「ふむ、そういうことですか」
「それもあるだろうけど違うでしょ」
凛はそういうときれいな笑みを浮かべる。隣にいる士郎はトラウマを刺激されたのか顔をひきつらせながら凛に聞こえない声量で「あかいあくま」と呟いていたが幸運にもそれは凛の耳には届かなかった。
一方、正面にいる美琴はその笑顔に言いようのない不安感を覚え無自覚に当麻の右手を握りしめていた。ちなみに美琴に意識が向いていたせいか当麻は凛の笑顔を見ることはなかったが見ていたとしてもこの後の出来事を回避はできなかっただろう。
「やっぱり“美琴”の“愛情”が“たっぷり”はいった料理だからじゃないかしら?愛情は最高のスパイスってもいうしね。さすが“学園都市最年少夫婦”ね」
凛のその言葉を聞くと、美琴と当麻は顔を真っ赤にして固まる。ちなみにお互いの手は握ったままである。
「手まで繋いでホントに仲いいわね二人とも」
その言葉にビクッと反応するのだがもちろん手は離さないままである。
この後も凛による羞恥心を煽る言葉攻めが続いたのだが二人は真っ赤になったまま反応はない。もちろん手は握り合ったままだ。
「…凛、二人共もう気絶してるぞ」
“手を繋いで”の下りが終わったあたりに呟かれた士郎の声はノリノリの言葉に掻き消され凛の耳に届く事は遂になかったのだった。
――余談ではあるが十数分後に気がついた美琴と当麻は凛にからかわれた以前の記憶しか残っていなかった。この後、凛のきれいな笑みを見ると美琴と当麻がおびえるようになったとかなんとか。
「なんでこんな事になったのかしら?」
「凛のせいだな」
「リンのせいです」
気絶した美琴と当麻を見ながらに凛はそんなつぶやきを漏らす。そこに間髪いれずに入る声があった。言わずもがな士郎とアルトリアである。
「目の前の光景の事じゃないわよ?なんであんな騒ぎの後にこんな和やかにご飯食べてるのかってとこにね…」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ