13話 「私は拒絶する」
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「………はぁ?」
「ですから。過去の自分を知るとか知らないとか。さっき自分の身に何が起きたとかなんとか。そんな過去を振り返ったって何かいい事がある訳でもなし!平和な日常が一番です!ね?」
「ね?じゃないだろう。お前は何を言っているんだ?記憶の話を持ち出したのはお前自身だぞ?」
無理に強がるような引きつった笑みを浮かべたカナリアに、俺は思わず問いかけた。
ついこの間ヒトに向かって記憶を取り戻したらどうかと提案したとは思えないほどに清々しい話の逸らし方だ。無理に明るい口調を振り回してはいるが、いつもの明るさではなく空元気であることは明白だった。
「そんなに俺に言いたくない事があったってのか?」
「知りません」
「何故隠そうとする?お前に都合の悪い事はあるのか?」
「存じ上げません」
「面白半分ならやめておけよ。今回ばかりは俺も引けないぞ」
「記憶にございません」
どこぞの政治家のようなすっとぼけ方で取りつく島もない。こちらの質疑に応答する気が一切ないらしい。
ふつふつとした苛立ちが湧きだしてくる。目の前に知りたい真実があるのだ。
何故隠す?何故白を切る?そんなに俺が気に入らないのか?今更になって生意気な年下に意趣返しでもする気なのか?苛立ちがそのまま口をついて飛び出す。
「パートナーだの何だのと都合のいい時だけ言葉を振りかざし、肝心な時はだんまりか?随分と都合のいいことだ。もういい、俺も口先だけで実践を伴わないような奴をパートナーとは認めたくない。――言わないならコンビ契約は解消させてもらう」
「………ッ」
カナリアが言葉に詰まり、キッとこちらを睨みつける。
彼女にこんな目を向けられたのは初めての事だ。強い拒絶を伴ったその目に、俺は一瞬だけ気圧された。
「それでも、言えません」
「………言え」
「嫌です」
きっぱりとした、これで本当に解約されても口は割らないと言う強固な口調だった。
本当の本当に、何を言っても俺に真実を話す気はないらしい。ここまで頑なに俺の要求を拒むとは思わなかった。
何故――その言葉ばかりが頭を過る。そのうちに、いつの間に俺はこれほどカナリアを信頼していたのだろうと思い至り、想像以上に動揺している自分自身に驚きを隠せなかった。
つい最近まで他人だったヒトだ。その面倒事に巻き込まれて危ない道に足を踏み込むのを是とする者はそういないだろう。誰しも他人の面倒事で自分の命を懸けたいとは考えない。カナリアとてそれは同じなのだろう。そして俺自身、その状況になれば「そうか」と一言返し、それで関係は終わるのだろうと漠然と考えていた。
だが、本当はそんなこと想像だにしていなかったのかもしれない、と思う。
現に、認めよう。俺は彼女に期待を抱いて
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