13話 「私は拒絶する」
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「宣言通り首は貰ったぞ。血みどろ騎士」
「あ、が……ッ」
声を出すことが出来ない。喉からずるりと零れ落ちた自分の頭に、肺が空気を送り込めない。
「ブラッドさぁぁぁぁあああんッ!!!」
俺が最後に見たのは、クロエが何かを呟く顔。
俺が最後に聞いたのは、カナリアの悲鳴。
そして、うすぼやけた記憶の断片。
『隊長………これ以上無茶は止めてください。もし貴方が死んでしまったら俺達は『―――』さんに顔向けできないんすよ。魔将相手に俺達だけじゃ心許ないのは分かりますが、それでも――ね?』
どうやら、その記憶の断片でも俺は無謀な事をしていたらしい。
俺はどうすればよかったのだろう。追わなければよかったのか、逃げればよかったのか。
或いは剣の使い方を思い出したあの日に、いつかこの命を散らすことを運命づけられていたのか。
そして。
そして――。
そして、俺は――?
遠のいたはずの意識が、次第に引き戻されるように浮上していく。
耳元で誰かの声が聞こえた。聞き慣れた声の筈なのに、あまり聞いた事のない声色だった。
「……い!………まして!……目を!目を覚ましてください、ブラッドさんッ!!」
頭の裏が硬くて痛い。石畳にしては感触が変だ。
俺は声に呼ばれるままに、ゆっくり瞼を開けた。
そこには――月明かりに照らされる褐色白髪の少女が、翡翠色の瞳に涙をためて見下ろしていた。
「……どうも頭が痛いと思ったら、カナリア。お前の膝枕か?」
「コラッ!!だれの太ももが岩みたいですかぁッ!?」
ゴキンッ!と鈍い音と共に鼻がツーンとする衝撃が顔面に襲う。
一発殴られたらしい。そんなことを言われても硬いものは硬いのだが。
これ以上殴られたら顔の形が変わってしまいそうだと思い、体を起こして周囲を見る。
「もう、本当に……良かったぁ、目を覚ましたぁぁぁ〜〜………」
カナリアは俺を追ってここまで来て、介抱してくれていたらしい。起き上がった俺にホッと安堵の息を吐くと同時に、緊張の糸が解けたように地面に手をついてへたり込んだ。
周囲に広がるのは、破壊し尽くされた広場だった。
はらりと舞う黒い羽根の主はもう見当たらない。
少し離れた所には段平剣の砕けた刃と、細剣が転がっていた。どちらも俺のものだ。
あの子供はもう帰ったのか。いや、本当に気にしているのはそれではなかった。
「負けた、のか。20年の間、一度も負けたことなど無かった俺が――」
最後の一撃は、確かにこちらが先に捕えた筈だ。いや、それより――と俺は首元を触る。そこにはいつもの自分の首の感触しかない。先ほど、俺の首は確かに切り落とされた
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