歌劇――あるいは破滅への神話
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よってこの世界が終わるのなら、第二幕によって次なる世界が始まるのでなければ、第二幕という存在は成立し得ないでしょう」
「次なる世界」
ウラルタは微かに首を横に振った。
「そこで何が起きると?」
「すべての和合によって世界が終わり、第一幕が終わるなら、再びすべてが分かたれる事から第二幕が始まると思われます。光と闇が分かたれれば、損なわれた月が再び夜を割って、正しい高さに落ちてくるでしょう」
ウラルタも星占に倣って、共に空を見上げた。
「ですが、定かなことではございません。その内容を秘匿するため……第二幕を全き形で次なる世界に持ち去るため……あの巫女は亡くなられたと私は考えます。この世界で脚本が見つかることはないでしょう」
星が、消えていく。鋭さが消えて、闇に滲んでいく。
「終わりはすぐ」
星占が手を伸ばしてきた。蝋燭が消えて、何も見えなくなった。闇の中、星占の冷たい手が、ウラルタの右手に触れた。
ウラルタは使命を思い出した。
すべての苦しみを終わらせる為に来た。
もしも希望がないならば、世界の自殺に手を貸す為に来た。
そうする事を望まれて、影達に送り出された。
「魔女よ、共に行きましょう」
闇と光が音もなく、頭上で混ざりあっていく。
「いつか全ての光と闇が和合する場所で、月が落ちてくるのを見よう――」
この時、わかった。
唯一正しい台詞が。
本当に言うべき言葉が。
ウラルタはもう迷わず、もう恐れなかった。
静かに口を開き、その言葉を唇に乗せた。
『さあ、一緒に、第二幕を始めましょう――』
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