第4部 誓約の水精霊
第7章 遭遇
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いく。
あ、とうめきを漏らし、杖を振ろうとした隊長の体を、巨大な竜巻が包み込んだ。
竜巻に四肢を切断され、一瞬にして薄れゆく意識の中、隊長はとどめを刺したはずの騎士が立ち上がり、切り裂かれた喉をむき出しにして微笑んでいるのをはっきりと見た。
ウェールズは杖を下すと、草むらに近づき、倒れたアンリエッタに近づいた。
アンリエッタは草むらに投げ出されたショックで、目を覚ましたらしい。
近づくウェールズを信じられない、といった目で見つめた。
「ウェールズ様、あなた……、いったいなんてことを……」
「驚かせてしまったようだね」
アンリエッタは、どんな時も肌身離さず持ち歩いている、腰に下げた水晶光る杖を握った。
それをウェールズに突きつける。
「あなたは誰なの?」
「僕はウェールズだよ」
「嘘!よくも魔法衛士隊の隊員たちを……」
「仇を取りたいのかい?いいとも。僕を君の魔法で抉ってくれたまえ。君の魔法でこの胸を貫かれるなら本望だ」
ウェールズは自分の胸を指し示した。
杖を握るアンリエッタの手が震え始めた。
その口から魔法の詠唱は漏れない。
代わりに漏れたのは、小さな嗚咽だった。
「なんでこんなことになってしまったの?」
「僕を信じてくれるねアンリエッタ」
「でも……、でも、こんな……」
「訳はあとで話すよ。様々な事情があるんだ。君は黙って僕について来ればいい」
「わたし、わからないわ。どうしてあなたがこんなことをするのか……。なにをしようとしているのか……」
どこまでも優しい言葉で、ウェールズは告げた。
「わからなくてもいいよ。ただ、君はあの誓いの言葉どおり、行動すればいいんだ。覚えているかい?ほら、ラグドリアン湖畔で、君が口にした誓約の言葉。水の精霊の前で、君が口にした言葉」
「忘れる訳がありませんわ。それだけを頼りに、今日まで生きて参りましたもの」
「言ってくれるね、アンリエッタ」
アンリエッタは、一字一句、正確にかつて発した誓約の言葉を口にした。
「……トリステイン王国王女アンリエッタは水の精霊の御許で誓約いたします。ウェールズ様を、永久に愛することを」
「その誓約の中で以前と変わったことがあるとすればただ一つ。君は今では女王ということさ。でもね、他の全ては変わらないだろう?変わるわけがないだろう?」
アンリエッタは頷いた。
こうやってウェールズの腕の中に抱かれる日のみを夢見て、今まで生きてきた自分だった。
「どんなことがあろうとも、水の精霊の前でなされた誓約がたがえられることはない。君は己のその言葉だけを信じていればいいのさ。あとは全部僕に任せなよ」
優し
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