赤い夢
第四話
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似合う、ラピスラズリの瞳が特徴的な女性だ。
「……はぁ、退屈ですねぇ」
机の上に山積みとなっている、数百枚とある書類。それを見て、軽く女性は溜息を吐く。
それでも、その手は休む事はない。
机の右に溜まっている、決裁用の書類。それに自身の名前をサインしては、左の山に重ねていく。
早く、だが決して雑にではなく、流麗な筆記体で、ペンを走らせる。
―――…コンコン
扉をノックする軽快な音が耳に響く。
私は入る事を許可する。すると、白衣を纏った武偵高からの後輩の女性が姿を現す。
「…お忙しい所、失礼します」
「いえ、それでどうかしましたか?」
「はい、先―――副所長にお客様です。」
シャルニーニは武偵局に新設された衛生学部の薬物科(メディシン)の副所長という役所に就いている。
他には、武偵病院内での臨時医療班等に当たる。
「……お客、ですか?」
可愛らしく、小首を傾げる。…今日は誰かと会う約束を取り付けていたか?
60時間程、寝ずに稼働している為に、少々思考が遅れた。
予定を書き込んでいる濡れ羽色の装丁の手帳を白衣から取り出す。
開く前に、その女性が訪ねて来た相手の名を告げた。
「はい、“銀月”です。」
―――銀月。
脳内で一致する、その異名で思い当たる人物は一人しかいない。
「……凍夜ですか!」
「はい、凍夜先輩です。確か今日、お会いになる約束を取り付けていましたよね?」
「…そうでした、今日は久しぶりに凍夜と会う約束でしたね」
彼と会うのも久方ぶりだ。結婚してからは、碌に会った覚えはない。
私は思わず、椅子から立ち上がり、嬉々として白衣を翻しながら扉に向かう。
「…この書類の方は私がやっておきますね。」
「ええ、お願いします。その代わり第一課の方だけに少しばかり予算を回しましょう」
「助かりますよ、丁度予算が足りなかった所ですから」
互いに薄く笑いながら目配せをする。
流石に話が早い、昔からの付き合いの為に、こちらの事を心得ている。
世の中はギブ&テイクだ。
この後輩は昔からやれば出来る子だ。今回の研究でも、きっと成果を上げるだろう。
後は後輩に任せて、私は部屋を出た。
…さて、凍夜と会うのも久しぶりですね。
2
少々お待ち下さい、すぐに呼んで参ります。
小柄な武偵高時代の後輩がそう告げて、少しばかりか経った。
とある一室に通された凍夜。出された、自身の好きなアールグレイと手製の様に見えるクッキー。
それに手を出さずに、そのカップの水面を覗いていた。ソファーに身を預ける。
……コツ…コツ
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