赤い夢
第一話
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々を送っていると逆に“あの時”の事を鮮明に時に思い出す。
「……やはり、俺には」
暗い面持ちで、何かを振り払う様に、時夜は頭を振った。
4
あの夢を見た後、落ち着きを取り戻しはしたが、再び寝床に入る気にはなれなかった。
また、あの悪夢の様な夢を見る様な気がして。
そう考えただけで、背中に氷を入れられた様に背筋が冷たくなるのを感じる。
未だに、首に違和感を感じて手を馳せる。
気を利かせてか、時切が語り掛けてくれるが、その配慮も今は鬱陶しかった。
……一人にして欲しかった。
ヴィクトリアは察してくれたのか、化身化を解いて姿を消している。
いや、彼女と俺との間には特殊なラインが繋がっている。
言いはしないが、ヴィクトリアの事だ、解っているのだろう。
夜の帳が徐々に薄れて、夕日にも似た茜色の朝焼けが地平線に広がっていく。
人々の頭上に夜明けは公平に訪れる。それは、前世の母がそう幼き日に教えてくれた。
そして、それがこれだけ待ち遠しいと思った事は殆ど無かった。
「…あっ……夜、明けてきたのか」
カーテンの隙間から零れる白光。
伏せていた顔を照らし、俺は思わず目を細める。
……長かった。
夜がこれだけ長いと感じたのは、夜の暗闇に圧迫感を憶えたのは、前世を入れなければ紛れもない初めてだった。
あり得ない事だけれど、あの夢の出来事が現実に起こらないかと、疑心暗鬼になりそうだった。
張り詰めた緊張の中。何もない暗闇の先を、幾度と確認した事だろうか。
「…漸く、五時なのか」
部屋に備え付けられた時計が射す時間は五時ちょっと過ぎ。
本来、鍛錬の日ならばとっくに起きていなければならない時間。
だが、生憎と今日はその日ではない。
鍛錬の日以外で、こうした時間に起きている事は珍しい事だ。
何時もと同じ朝。けれど、それに違和感を覚える。
………漸く。
そう、漸くだ。
そう思う程に、本当に時の過ぎるのが遅い夜であった。
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