赤い夢
第一話
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現実だと告げている。
だけど、制御の効かなくなった感情が力となって、不安定な膨大なマナが身体に帯電する。
空気が振動して、窓ガラスを嵐の夜の様に割らん如く、激しく叩きつける。
漆黒の闇夜を淡いマナが照らし上げる。
そこから覗く時夜の顔は憔悴し、磨耗し、今にも消えて無くなりであった。
『ちょ、ちょっと時夜!?どうしたの!』
流石の時切も異常を察知したのか、文句を言う暇もなく、主の身を案じる。
「…はぁ……はぁ」
数分。
大分規則正しくなり落ち着きを取り戻して来た呼吸。若干のゆとりを取り戻した感情。
そんな時だった、今まで黙っていた調和が語り掛けてきたのは。
『…主様、大丈夫ですか?』
「……ああ、とりあえずは落ち着いたよ。」
安定したいつもの調子で、疲弊した顔をして、そう時夜は口にした。
そんな時夜を化身化して優しく胸に抱き締めるヴィクトリア。
密着した状態で、ヴィクトリアは時夜の鼓動が落ち着きを取り戻して行くのを感じ取った。
「…今の、外には漏れてない?」
「はい、私がバレない様に結界を張りましたので外には漏れていません。時深様達もお気付きにはなられていないかと」
「……そうか」
言い、時夜はヴィクトリアから離れる。
「…ありがとう、ヴィクトリア。大分楽になった」
「…それは良かったです、主様。ですが、無理は為さらないで下さいね?」
「ああ、少々汗を掻いて気持ちが悪いからシャワーを浴びてくるよ」
『…大丈夫なの、時夜?』
「大丈夫だよ。じゃあ、行って来る」
そう言い、疲れた表情で頭を押さえて部屋を出て行く時夜。
そうして、部屋の中に静寂が訪れた。
「……主様、あなたはまだ…」
主が消えて閉じられた扉を見つめて、ヴィクトリアはそう呟いた。
私と主様の間には特殊なラインが引かれている。
それ故に、私は主様の過去を、前世を知っている。
本人は違うと言うだろうが、未だに“あの時”の事を捨てきれていない。
割り切ってはいても、そう簡単、容易く捨てられるモノではない。
……それでも
「……私があなたを包みますから」
私は“鞘”だ。貴方を優しく守り、包み込む鞘なのだ。
そうして、彼女は二の句を紡いだが、それは深い夜の帳にかき消えた…。
3
「……………」
頭から、掻いた汗を流す様に熱いお湯を浴びる。
汗を流す様に、嫌な夢を洗い流す様に。
「………ふぅ」
大分、いつもの調子を取り戻しつつあった。けれど、まだ情緒が不安定だ。その魂が揺れている。
こうして、楽しい日
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