陽だまりの日々
第二話
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着く。
周囲の音が、聞こえなくなって行き。世界に一人だけになった様な錯覚に陥る。
「―――時夜っ!…大丈夫ですか?」
異常に気付いた時深がその身体を抱き起こし、顔を覗き込む。
その表情は蒼白で、血の気が引いている。額には玉の様な汗が溜まっている。
「…うん、ちょっと人混みに酔って眩暈がしただけだから」
遠くから聞こえてきた母親の声。その声に安堵感を覚える。
立ち上がろうとすると、自身の身体なのに上手く言う事を聞かず、ふらふら…と、視界が覚束なくて傍から見ていて危ない。
すぐさまお母さんに身体を支えられる。
『……主様、本当に大丈夫ですか?』
『…ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうな、リア』
頭の中にリアの声が直接響く、姿は見えないがその声音で此方を心配してくれているのが伝わってくる。
「ほら時夜、乗れ」
「…大丈夫だよ」
「いいから」
お父さんが俺の前で屈み、背中を此方に向けてくる。
それに有無を言わせる前に、お母さんが俺の身体をお父さんの背中に乗せる。
形として、俺はお父さんにおんぶされる形になる。
何処か広い、父の背中に安心感を覚える。今世において初めての事だ、おんぶなどをされたのは。
……俺は基本的に、自分から甘える様な事はしない。
また、心を預け過ぎて失う事が怖いのだ。それを恐れている。
前世において、両親におんぶされた事など幼少時の曖昧な事で、片手で数える程位しかないだろう。
それ故に、父の背中というものがここまで安堵感を生むとは知らなかった。否、覚えていなかった。
「…………」
安心したら、眠気が射してきた。
俺はそうして父の首に手を回して、ゆっくりと瞳を閉ざした。
2
「……眠ったか」
俺は背中で、細く健やかな眠りに就いた息子に横目を向ける。
本当に気持ち良さそうに、安心しきった無防備な顔を晒している
「…時夜はこういう時でないと、自ら甘えたりしないですからね」
右腕に妻である時深が身を寄せてくる。
上目遣いに此方の表情を覗き見てくる。それに思わずドキリ…とする。
「…ああ、そうだな」
この子はこの世代の子供にしては精神的に大人びていて、甘える様な事はして来ない。
基本的に、出来る事は何でも自分で済してしまう。そこに、何処か壁を感じてしまう。
病気や、本当に自分が弱った時、手を貸して欲しい時にしか甘えたりしない。弱みを見せない。
時夜は何処か、精神と身体の比率が合っていない様な、そんな錯覚がある。
この子が永遠存在になってからの約一年というのは、正に顕著であ
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