それは世界の狭間にて
流転する少年と百億の時を廻る少女
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れは守る為に。
もう失って戻らない世界に向けて、それを憂いながら。それでも、愛しているから。
失ってしまった愛しい女も、友も隣人も、何時の日かきっとめぐり合える事を信じて。
結んで、止めて、また謳う。
何時終わるとも解らない、人の身には過ぎた永劫に続く時間を結んで、止めて、また謳う。
だがそうだとしても、願いを紡ぐ事は止めない。
全てが失われた世界の果てで、願いと二度と帰らぬ日々を想いながら。
―――極大の憎悪を支えにし、世界の中心にいる、目に見えぬ外敵を睨み付けて。
『――――□□□□□□□』
数え切れぬ程の膨大な力の鬩ぎ合いによって、崩落して行く世界の中で。
逆様に堕ちて行きながらも彼はそう想う。いつかきっと―――未来へ繋がると信じて。
●
―――あの日。
世界の終わりの、そして始まりの場所で、確かに私は世界から消え行く彼を見た。
胸が切り裂かれる思いだった。我が身の事の様に今すぐ此処で慟哭に身を任せたいとすら思った。
彼に漸く追い着いたと思っていた、そして今度こそ離れないと誓った筈だったのに。
けれど、再び訪れてしまった。私達を別つ様に訪れた悲哀によって。
人々は成す術もなく消え落ち、世界は侵食され、飲み込まれてその存在を無かった事にされた。
だけど彼は最後まで、悲哀という理に飲み込まれた世界でも一人残されて祝詞を詠っていた。
自らの望みと、失われて行った人達の想いを胸に抱き、極大な憎悪を身に纏って。
その光景を目にするのは“初めてではないというのに”。
初めてではない、自らの既知の範囲内だというのに、やはり慣れないものは慣れない。
結末に差異はあるものの、これは今の私の気持ちではない。
積み重なった都合50年にも渡る、私の“歴史-繰り返し-”の記憶。
与えられた、譲渡された“前回までの私”の気持ちが、心の内に留まっている。
けれど、今感じているこの悲嘆の嘆きは本物だ。―――前回の事で恐らく、“四週廻った”。
だからこそ、次はこんな結末に至らない様に私は祈りを紡ぐ。
次こそは幸せで、皆が生き残る、幸せな結末を、ハッピーエンドを迎えれる様にと。
●
―――冷たい雨だった。
一度濡れれば、骨の髄まで痛みを感じさせる凍てついた雨。
まるで氷の結晶が雫の形のままに降ってきた、そんな雨だった。
建物の屋上を抉る様な勢いで打ちつける天からの涙。
周囲に木霊する水の爆音は雨音の範疇を超えて、もはや滝と呼んだ方が相応しいかもしれない。
どれだけ、降り続いていただろう。はるか天上からの雨量
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