三十五話:歪んだ歯車が動かす者
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た過去を取り戻す!
その為に、魂の循環に逆らい、運命に抗ってみせた!」
「お前がやっていることは全てから目を背けて逃げているだけだ!」
「黙れ! “本物”として生まれた貴様に、何が分かる!
私は全てを犠牲にしてでも過去を取り戻す!」
ヴィクトルの目はもはや正気ではなかった。誰の言葉も耳には入らない。
いや、入ってきても止まらない、止まれない。彼は誰からも認められなくとも己のただ一つの願いの為に進み続けるだろう。それだけの覚悟と力を彼は持っている。
ヴィクトルはルドガーに止めを刺すために大きく剣を振り上げる。後はこの剣が彼の心臓を貫けば終わりだ。そう思い振り降ろそうとした瞬間、仙術と妖術二種類の波動がヴィクトルに襲い掛かる。黒歌が助けに来たのである。それに対してヴィクトルは素早く反応して突き刺していた剣を引き抜き飛び去る。だが、まだ攻撃は終わらなかった。
ヴィクトルが飛び去った場所にすぐさま如意棒と聖剣が振り下ろされる。美候とアーサーが攻撃を仕掛けに来たのだ。ヴィクトルはそれにすぐさま反応し双剣で片方ずつ受け止めそこから一気に横に回転して二人を吹き飛ばす。しかし、その瞬間を待っていたかのように魔法陣から巨大な炎が放たれヴィクトルは飲み込まれる。
その魔法を放った張本人ルフェイはこれで倒せたと思ったが現実はそう甘くはなかった。
炎が晴れると同時に見えてきた物はハンマーを持ち水の防御壁を作りだして掠り傷一つないヴィクトルの姿であった。そのことにルフェイとアーサーは驚きを覚えるが、黒歌と美候は別の驚き、
いや、信じられないことに直面していた。
黒歌は負傷していたルドガーの傷に仙術で応急処置を施しながら何度もヴィクトルの気を探った。そして出される答えは何度やっても同じことが信じられなくて同じ仙術を使う美候を見るが美候も同じような表情を浮かべていた。ただ一人表情を変えないのは全てを知っているルドガーだけである。
「おい、黒歌……あいつの気ってよぉ……」
「たぶん……間違いないにゃ。でも……そんなことってありえるのかにゃ」
驚愕の表情で言葉を交わす二人にヴィクトルは笑い声を上げる。
その声は黒歌が大好きな笑い声と似ているようで全く違う、背筋が凍り付く様なものだった。
ヴィクトルはひとしきり笑った後、ゆっくりと仮面に手をやり、外すような構えを見せた。
「自己紹介をしよう、顔も見せなければな……私の名前は―――」
仮面を取り外しポケットに入れるヴィクトル。
その顔を見た瞬間、その場にいた“ルドガー”以外の全員が息をのむ。
それもそうだろう、ヴィクトルの正体は―――
「―――ルドガー・ウィル・クルスニク……十年後の彼さ」
ルドガー
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