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駄目親父としっかり娘の珍道中
第71話 体調が悪い時って大概機嫌が悪い
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 雨、しとしとと空から降り注ぐ冷たい滴。それを浴びた際の不快さと言ったらない。
 だが、時として雨を体に浴びていたい時も人にはあったりする。例えば、額から零れ落ちる涙を隠す時とか―――




     ***




 辺り一面に広がるのは相も変わらず死体の山であった。地面に転がる死体、死体、死体―――
 其処から漂う血と腐敗の匂いが鼻につく。幸いなのは降り注いだ雨がその匂いを幾らか緩和してくれている事であろうが、その代わりとして体に当たるその滴が妙に痛い。
 まるで、あの時の雨の様だ―――
 そう思いながら、銀時は刀についた血糊を振り払い鞘に納める。彼の羽織っていた白い陣羽織は返り血により赤く染まり上がりその量が敵は勿論味方さえも恐怖の象徴として捉えてしまう。
 本人からして見ればそんな事など大して気になどしない。なぜなら、自分以上に返り血を浴びた者がすぐ其処に居るからだ。
 銀時の羽織っていた羽織とは対照的に真っ赤な陣羽織を羽織ったそれは、ただ何もせずその場に立ち尽くしていた。
 両手に持ってた色鮮やかな刀の刃にはべっとりと血糊がこびりついている。
 根本で束ねた長い栗色の髪には戦いで浴びた返り血がこびりつきその髪を汚していた。
 だが、何よりも銀時がその者を見る事になった要因は、その顔だった。
 
「またか……」

 そっと、銀時は呟いた。知っていたのだ。その表情の意味を―――
 白夜叉と紅夜叉。
 その名を聞けば大概の敵は震え上がる。戦場を荒らし回る二匹の鬼。その強さは常識を凌駕し、二人が歩いた後には敵の死骸しか転がっていないとされる程であった。
 誰もがその光景を目の当たりにすればこう言うであろう。
 
【奴らは戦う為に生まれてきた者達だと……】

 だが、それは大きな間違いだった。少なくとも紅夜叉は違っていた。
 そう、紅夜叉は……彼女は戦いを望んではいなかったのだ。その証拠こそが、銀時が見たその表情であった。
 今、紅夜叉こと、高町なのはは泣いていた。雨の降り注ぐ曇天を見上げながら、零れ落ちる涙を雨と共に大地に流し続けていた。
 まるで、戦いを好む自分に対する決別の意でもあるかの様に―――

「何時まで泣いてんだよ、お前は?」
「……銀時」

 後ろから銀時の声を聞き、紅夜叉は振り返った。その瞳には悲しみの意志が感じ取れた。仲間を失った悲しみ、敵を斬った事への罪悪感、そして、戦い続ける自分との葛藤。それらが彼女の中でとぐろを巻き、暴れ続けている。それを彼女自身どうする事も出来ず、ただこうしてひたすらに涙を流し続ける事しか出来ずに居たのだ。
 その姿が、銀時にはとても痛々しく見えて仕方がなかった。果たしてそうだろうか?
 ただ、戦場で涙を流すこいつに嫌悪感を感じただ
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