暁 〜小説投稿サイト〜
光明の魔導師〜眩き妖精の物語〜
出発
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ディを抱き上げ木の上に登る。さすがにここまでは来れねえだろ。


「大丈夫か?おっと、足を怪我してるな。どれ見せてみろ…」



幸い傷は浅かったが、爪で引っ掻かれた後がある。野生の獣に付けられた傷は浅くても酷くなる可能性が十分ある。これ豆知識な。



「フーガぁ…怖かったよ…」


「あーよしよし、もう大丈夫だ。もう大丈夫だぞ。」



ウェンディがぎゅっと抱き着いてくるので頭を撫でてやった。


「ちょっとここにいてくれ。さっきの犬っころを始末してくる。大丈夫だ、すぐ戻る。」



そう言ってウェンディを木の上に座らせ、怪我をした脚にハンカチを巻いてやった後、木から降りて狼の方を見た。


「さて犬っころよ。俺はこれでも動物は好きな方だからな。痛めつけるようなことは極力したくないんだ。だから俺らが村に戻るまでの間、大人しくしててくんねえか。」



そう言って、拘束用魔法陣を即座に組み上げる。



「なあに、半日くらいしたら解けるさ。しばらく大人しくしててくれ。」



そう言って優しく頭を撫でてやる。


さて、帰りますか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰り道、ウェンディをおんぶして、体の前にカゴを引っさげてその中にツノを入れて歩いていた。


「フーガ、お話ししたいことがあるの…」


と、唐突にウェンディが切り出す。



「なんだ?」



「私のね、お母さんはね、ドラゴンなんだ…」



「ドラゴン?」



伝説なんかに出てくるな。たしか大昔は龍と人間の戦争もあったとか。


「天竜グランディーネっていうの。私はそのお母さんから天空の滅竜魔法を教わったんだ。」


「そいつはすげえな。でも俺はウェンディの母親のドラゴンは見たことないぜ?」



「X777年、7月7日に…私のお母さんは…グランディーネはいなくなっちゃったの…」


「…っ!」



失言だったか。だがいなくなっただと?



「突然…朝起きたら……いなくなっちゃって……ずっと一緒だって、思って……たのに……っ」



おぶっているので顔は見えないが、ウェンディはおそらく泣いているのだろう。



「もっと…一緒にいて……わ、私、こん…なに…ひぐっ……魔法使えるように……なったよって…うぇっ……褒めて…貰いたかったって……うっ…ひっ」



「……寂しかったよな。」



「うん…」



「辛かったよな。」



「うん…」


「大丈夫だ。」


「……え?」



お前は一人じゃない、とは言えなかった。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ