出発
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ディを抱き上げ木の上に登る。さすがにここまでは来れねえだろ。
「大丈夫か?おっと、足を怪我してるな。どれ見せてみろ…」
幸い傷は浅かったが、爪で引っ掻かれた後がある。野生の獣に付けられた傷は浅くても酷くなる可能性が十分ある。これ豆知識な。
「フーガぁ…怖かったよ…」
「あーよしよし、もう大丈夫だ。もう大丈夫だぞ。」
ウェンディがぎゅっと抱き着いてくるので頭を撫でてやった。
「ちょっとここにいてくれ。さっきの犬っころを始末してくる。大丈夫だ、すぐ戻る。」
そう言ってウェンディを木の上に座らせ、怪我をした脚にハンカチを巻いてやった後、木から降りて狼の方を見た。
「さて犬っころよ。俺はこれでも動物は好きな方だからな。痛めつけるようなことは極力したくないんだ。だから俺らが村に戻るまでの間、大人しくしててくんねえか。」
そう言って、拘束用魔法陣を即座に組み上げる。
「なあに、半日くらいしたら解けるさ。しばらく大人しくしててくれ。」
そう言って優しく頭を撫でてやる。
さて、帰りますか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰り道、ウェンディをおんぶして、体の前にカゴを引っさげてその中にツノを入れて歩いていた。
「フーガ、お話ししたいことがあるの…」
と、唐突にウェンディが切り出す。
「なんだ?」
「私のね、お母さんはね、ドラゴンなんだ…」
「ドラゴン?」
伝説なんかに出てくるな。たしか大昔は龍と人間の戦争もあったとか。
「天竜グランディーネっていうの。私はそのお母さんから天空の滅竜魔法を教わったんだ。」
「そいつはすげえな。でも俺はウェンディの母親のドラゴンは見たことないぜ?」
「X777年、7月7日に…私のお母さんは…グランディーネはいなくなっちゃったの…」
「…っ!」
失言だったか。だがいなくなっただと?
「突然…朝起きたら……いなくなっちゃって……ずっと一緒だって、思って……たのに……っ」
おぶっているので顔は見えないが、ウェンディはおそらく泣いているのだろう。
「もっと…一緒にいて……わ、私、こん…なに…ひぐっ……魔法使えるように……なったよって…うぇっ……褒めて…貰いたかったって……うっ…ひっ」
「……寂しかったよな。」
「うん…」
「辛かったよな。」
「うん…」
「大丈夫だ。」
「……え?」
お前は一人じゃない、とは言えなかった。
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