黒と黒.1
[8]前話
.1
もはや古田も言い逃れはしなかった。厨房には他に、5人も従業員がいたからだ。
思い空気のなか、静寂を破ったのは平泉の言葉だった。
「どうやら、貴方が神であることに間違いはないようですね。」
古田は黙り込んでいる。
「どれだけ相手が世間的に悪者でも、それを裁くために手段を誤れば自身も悪になるのですよ。」
平泉がそう言うと、ようやく古田は口を開いた。
「この世界に、悪じゃない人間がいると?いいえ、そんな人間はいません。こんな自分勝手な種族の生き物に、どんな言い訳をしても悪じゃないものなんていませんよ。何が正しいとか、正しくないとか、それは全て人が決めた道徳観の話でしょ。そんなもの、世界から見れば人間のための自己満足に過ぎない!人は増えすぎたんですよ。だから、先ずは道徳観から見ても『悪』と言えるどうしようもないやつらを裁いてきたんです。」
古田は今までに見たことのないほど、恐ろしく荒々しい様子だった。
そして、さらに続けた。
「この前見られたときに、ここの従業員の素性は調べさせてもらいました。前科者だらけのここに、わざわざ一人で来ると思いますか?」
古田の言葉に、一同の表情が強張る。
「既にお仲間を呼んでいると言うことですか。」
平泉がそう言うと、古田は
「ええ、もうここの料理が食べられないのは残念ですがね。」
古田のその言葉に、平泉は全く動じずに言った。
「ですが、貴方に果たしてお仲間がいるのでしょうか?確かに、貴方に熱狂的な信仰心を寄せるものも数多くいるでしょう。ですが、貴方は今まで単独で犯行を行ってきた。つまり、貴方には仲間はいないのではないでしょうか?」
「仲間…確かにそんなものはいないかもしれませんね。ですが、信仰者だけいれば充分ですよ。」
古田がそう言うと、平泉はいつものように返した。
「古田さんは、うちの従業員の素性をしっかりと調べていないようですね。」
平泉そう言うと、太田に目配りをした。
すると太田が口を開く。
「僕は、あなたがあげた投稿の入力源を特定することは出来ませんでした。でもそのデータをすり替えて、投稿を上書きすることは出来ましたよ。」
太田がそう言うと、古田は焦りの表情を浮かべた。
「あなたが一声かければ、熱狂的な信仰者はここに来るかもしれません。ですがその心配も、すり替えた今ならありませんがね。」
少しずつ、神の世界は崩れつつあった。
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