11部分:第十一章
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自分でもわかっていないようだな」
「とりあえず助かったのはわかってるわ」
エリザベートの答えはこうであった。
「何とかね」
「だがその何とかを掴むのもまた実力だ」
ザーヒダンはまた返す。
「どうやら貴官は。私が思っているよりも、そして噂よりもずっと凄腕のようだな」
「それで戦いが楽になればいいけれどね」
不敵に笑ってまた返す。
「生憎そうはいかないみたいね」
「だが。今は生き残ることが出来るだろう」
また態勢を変える。攻撃ポジションに戻った。
「私を倒せばな」
「どうあっても退かないつもりね」
「そうだ」
その目は再びエリザベートのエインヘリャルを見据えていた。それから離れることはない。
「貴官を倒してな」
「なら私も」
もう舞いは見せるつもりはないようであった。その傾向が見られない。
「一気に行くわ」
「この一撃で決める」
二人は互いの正面に出た。それぞれを阻むものは何もなかった。
「この戦いに勝った者が生き残る」
「恨みっこなしね」
緊張がその場を支配していく。二人だけの世界となっていく。
「参る!」
「これで!」
その緊張が頂点に達する。するとその瞬間に両者は動いた。
間合いに入るとすぐに攻撃がはじまった。ビームバルカンが火を噴く。だがそれも一瞬のことで影が交差した。それが通り抜けた時。勝負は決まっていた。
「命だけは助かったようだな」
ザーヒダンはコクピットの中でまずは呟いた。
「おめでとうと言うべきか」
「そうね」
それにエリザベートが返す。
「どちらか、或いは両方が死ぬと思ったけれど」
「二人共生き残るとはな。これはどういう意味か」
「また戦えという意味なのでしょうね」
二人は静かにやり取りを続ける。
「今度出会った時に」
「ではそうさせてもらうか」
ザーヒダンは笑いながら言った。
「ではな」
「ええ」
ザーヒダンのタイガーキャットが動き脱出ポッドが飛ぶ。主を失くした彼の愛機はそのまま銀河の奥底へ落下していきそのまま消えて行く。それがエリザベートと彼の勝負の終わりであった。
「これでここでの戦いは終わりかしら」
「アルプ少佐」
呟いたところで通信が入る。
「はい」
「返事があるところを見ると生きているようだな」
「私はワルキューレですので」
くすりと笑ってそれに応える。
「ヴァルハラに行くことも帰ることも出来ますので」
「そうか、それは何よりだ」
「それで何かあったのですか」
彼女は問う。
「何、帰還だ」
「戦闘終了ですか」
「そうだ、すぐにジャンヌ=ダルクに戻ろう」
髭の隊長は言う。
「いいな」
「わかりました」
エリザベートもそれに頷く。
「全機帰還だ」
正式に命令が下る。
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