三十四話:どちらかを選ぶことは大変だ
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「ああ、ちょっと待ってろ。……トマトを使ったお菓子…だと?」
対価を見た瞬間に驚愕の表情を浮かべて顔を引きつらせるイッセー。なんだ、そんな簡単な物でいいのか。それなら今度からもどんどん試食に来てもらってもいいな。さてと……トマトを使ったお菓子なら山ほどあったはずだから掻き集めてくるか。
俺はすぐさまキッチンに向かい、冷蔵庫から『トマトシュークリーム』と『トマト・ア・ラ・モード』を取り出す、さらに残っていた『トマトクッキー』を袋に入れなおしてイッセーの元に持っていく。それを見てギャスパーは目を丸くし、イッセーは死んだ目で何やらブツブツと呟いている。
「これぐらいあれば大丈夫だよな。むしろ少ないくらいだろ」
「いや、むしろ多すぎ―――」
「大丈夫だよな?」
「ハイ、ダイジョウブデス」
とてもいい笑顔でイッセーに聞き返すとまるで機械のようにカクカクとした動きで頷いてくれた。こういうのは気持ちだからな、多い方が何かと助かるだろ。それにイッセーとギャスパーだけでなく、みんなで食べればすぐに無くなるよな。おまけに小猫もいるからこれぐらいあってもすぐに食べ終わるはずだ。そう言えば、借金時代はよくジュードやレイアが食材のおすそ分けをしてくれたな。
理由を聞いたらエルにお菓子をあげたら『早くシャッキンを返さないといけないからショクヒを浮かせるためにルドガーにあげる!』なんて言われたから可哀想になって俺に食材のおすそ分けをしてくれるようになったらしい。……その時ばかりは情けなくて本気で泣きそうになったな。不味い、思い出したらまた泣きそうになる。俺は頭を振って雑念を捨て去る。その行動に二人が驚いているが気にしない。
「さてと……このまま、帰らせるのもあれだし、少し話でもしないか?」
そう言ってイッセーに目配せをする。するとチラリとギャスパーの方を見て頷いてくれる。
俺みたいな奴がどれだけギャスパーを勇気づけられるかは分からないけど…いや、勇気づけるんじゃない。ただ、伝えたいことを伝えて悔いのない選択をするように言うだけなんだ。
「ぼ、僕は大丈夫ですうぅぅ」
「ああ、俺も大丈夫だぜ」
「それじゃあ、話の題目は―――力についてだ」
そう言った瞬間にビクリと震えるギャスパー。少し可哀想な気もするが俺はこれは避けては通れない道だと思っているので無視して話を進める。辛いだろうが我慢してくれ、ギャスパー。
「イッセー、お前は自分の力をどんな力だと思っている?」
「俺の力か……誰かを守れる力だな」
「ギャスパー、お前はどうだ?」
「……誰かを傷つける嫌な力です」
俺の問いかけに対してイッセーは誰かを守れる力だと言い、ギャスパーは誰かを傷つ
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