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第一章
少女の加護
連合とエウロパの戦いはエウロパにとっては辛いものであった。圧倒的な物量と技術を誇る連合の大軍を前に手も足も出ないような状況であった。
まず数が違う。連合軍は二一〇〇個艦隊をエウロパに送り込んできた。これだけの数を動員したのは人類史上かってないことであった。参加兵力は六〇億、これもやはり前代未聞のことであった。これだけの数を送り込んできた連合軍はそれを万全の補給システムによって支えていた。寸分の隙もない、そういった言葉がよく似合った。
連合軍の損害は常に微々たるものであった。とにかく艦艇の防御力とダメージコントロールが半端ではなかった。沈まず、そして立ち直りが早い。しかも艦内の医療設備もエウロパよりも充実し、医療技術も彼等より上であった。尚且つ後方には工作艦や病院船が多量に控えている。これ以上はない程の充実した設備であった。戦死者を出すことを極端に嫌う連合軍の周到な配備であった。
それだけに留まらないのがさらにエウロパ軍にとっては嫌なことであった。連合軍の通信も偵察もそういった技術もエウロパ軍より遥かに上をいっていた。エウロパ軍が連合軍に向かうよりも前に彼等を発見していることがざらであった。その為彼等に遅れをとってばかりであった。戦いはそうした圧倒的な差の為エウロパ軍の敗走続きであった。だがそれでも彼等は諦めずに戦っていたのである。
エウロパ軍第一七五艦隊。この艦隊もまた連日の敗戦によりその数を大きく減らしていた。
「二割か」
艦隊司令であるマロール=ド=クレール中将は今現在の艦隊全体の報告を聞き思わず暗澹たる思いにとらわれた。
「多いとは思っていたが」
「我が艦隊はまだましなほうです」
参謀の一人が沈痛な顔でそう述べる。
「二割で済んでいるのですから」
「二割でその程度だというのか」
「残念ながら」
その返事はクレールをさらに暗澹たる思いにさせた。
「中には消滅した艦隊もありますから」
「消滅・・・・・・」
この言葉を聞き絶句せざるを得なかった。消滅とは戦争においては部隊の九割程がなくなったということである。こうなってはもう戦闘どころではない。三割で全滅とされているのだから。この二割にしろ絶望的な割合なのである。
「はい、損害を受けたものや捕虜も入れまして」
「何ということだ」
「エウロパ軍全体でもかなりの割合が消耗しております」
「栄光あるエウロパ軍がな」
「残念なことですが」
「連合軍は実戦経験がなかったのではないのか?」
クレールは問う。それに関しても言わざるを得なかった。
「それがどうしてここまで」
「数と技術、そしてシステムでしょう」
「数は仕方がないか」
それだけはどうしようもなかった。元々数においては
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