1部分:第一章
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お話にならない位の差があったのだから。
連合とエウロパは人口にして三十倍以上、また総生産においてもそれだけの差があった。元となる地力が桁外れであったのだ。それが技術にまで出ていた。それはまずはどうしようもなかったのだ。
だが連合軍はこれが実質的に初陣であった。設立されて間もない。また連合設立当初、まだ各国の軍に分かれていた頃から対外戦争も内戦もなかった。あるのは海賊の掃討とテロ対策、そして災害救助だけである。実際に発砲したり危急に兵器を動かしたことはある。だがそれでも実際の戦争の経験はなかったのだ。
それはシステムによってカバーしていた。連合中央政府国防長官八条義統が命じて作り上げさせた補給、通信、偵察、戦術、救助、様々な事柄へのシステムが彼等を支えていたのだ。戦争を完全にシステム化し誰であろうが満足に戦い、生きることができるように。八条が出させて纏め上げたシステムは連合軍を完璧なまでに動かしていたのだ。
人ではなくシステムで戦う、それが連合軍であった。彼等はそれにより元々数や技術で大きく劣るエウロパ軍をまるでローラーの様に押し潰していっていたのだ。それにより今エウロパ軍は大きな損害を受けていた。だがその損害の根拠は彼等のシステムや数、技術にだけあるのではなかった。
「あの義勇軍がな」
クレールは呻く様に呟いた。
「連中がいるとな」
「手強いですね」
「奴等は捨石だ」
彼は吐き捨てるようにして言う。
「連合の人間ではない。サハラの人間だ」
「はい」
「だからだ。連合軍は奴等を最前線に出すのだ。正規軍の消耗を避ける為にな」
「ですね」
参謀達はグレールのその言葉に頷く。これはある意味において真実であった。連合は正規軍の前面に義勇軍を立てて攻め込むのが常だ。彼等はまず火事場に飛び込む。装備は正規軍のものよりもいいがそれは激戦地に飛び込むからだ。勝利の為だ。彼等の為ではない。実戦経験がなく、かつ消耗してはならない正規軍の為に彼等はいる。義勇軍の存在があるからこそ正規軍の損害は軽微であり、エウロパ軍の損害は大きくなっているのだ。
「それに確かに強い」
グレールもそれを認める。
「奴等の強さは桁違いだ。戦争を知っている」
「はい」
戦乱に覆われたサハラである。当然ながらそこにいた義勇軍達は戦争を知っていた。
「そのうえ装備も。驚く程いい」
「強い筈です」
「奴等がいるのといないので連合軍は大きく違うな」
「少なくともここまで大胆に攻め込んでは来なかったでしょう」
連合軍はどんどん攻め込んできてる。それによりエウロパ軍は雪崩を打つように敗走を続けているのだ。
「彼等が前面にいなければ」
「義勇軍は剣か」
「同時に楯かと」
「便利な楯だな」
そう皮肉りたかった。
「連合にとっては」
「で
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