2部分:第二章
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ら述べたのだった。
「数日後できる」
「数日後ですか」
「そうだ。それだけあれば充分だな」
こうも言う森宮だった。
「できる。また来てくれ」
「わかりました。それではまた」
「ああ。それにしてもな」
服部に曲を渡したうえでまた言った。
「もう二月は終わるか」
「終わりましたよ」
服部はすぐにこう述べてきた。
「それはもう」
「終わったのか」
「はい、今日から三月ですか」
「そうか。三月か」
季節の変わりを感じしみじみとなる。この時代の中ではついつい忘れてしまうことだった。
「早いな」
「そうですね。二月に入ったと思ったら」
「二月もな」
「ええ」
ここで二人は二月に起こったことを思い出したのだった。
「立派に最期まで戦われたそうだな」
「壮絶な最期だったと聞いています」
服部は森宮にこう告げた。顔は少し俯いている。
「栗林閣下は」
「俺は御会いしたことはないが」
「立派な方でした」
服部はその栗林という人物は知っていた。栗林忠道、陸軍中将であり硫黄島の指揮官だった。彼は硫黄島で圧倒的なアメリカ軍を前にして最期まで戦い散華したのである。
「人間としても軍人としても」
「そういう方だったか」
「立派な方はどんどん先に行かれています」
「だが。あの人達には会える」
「会えますか」
「靖国に行けばな。だからだ」
泣かない、悲しまないのだと。言外で述べていた。
「俺はまた今度靖国に行く」
「それはいいことです」
「今度の曲は靖国の英霊達に捧げる曲だ」
そしてこうも言った。
「是非な。捧げたい」
こう語ったのが三月一日だった。それから十日が経った。三月十日。しかしこの日は帝都である東京にとって関東大震災と並ぶ最悪の一日になった。
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