黒への一線.4
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古田は料理が来るまでの間、平泉と話していた。
話すと言っても、平泉が世間話を持ちかけてくる様子だった。
「それにしても、弱りましたね。」
「何がですか?」
「『神』の事件ですよ。あんな風な危ない輩がいると、おちおち外も出歩けませんし。お客様もいらっしゃらないので。」
古田は黙って軽く頷き、相槌をしていた。
「結局何を語っても、ちっぽけな犯罪者であることには変わりないですけどね。」
平泉がそう言うと、少し不機嫌そうな顔で古田は返した。
「でも、神が制裁しているのは犯罪者なんですよね?確か…」
「まぁ同じ穴の狢ですよ。今はそうかもしれませんが、ああいう輩は何をしでかすかわかりませんから。」
古田は明らかに、様子がいつもと違っていた。
しかし、平泉のその言葉に古田は何も言い返さなかった。
平泉はさらに続ける。
「古田さんは、神についてどう思いますか?」
不意をつく質問に、古田は動揺を隠すように言った。
「まぁやり方は誉められたもんじゃないですが、方向性はあまり間違ってはいないと思いますね。」
「そうですか、でも先日うちの従業員が襲われかけまして」
「それは災難でしたね。何かしたんですか?その従業員さん。」
「いえ、現場を目撃しただけなのですが…。」
「にわかに信じがたいですが、それが事実なら酷いですね…。」
「その時の従業員が、『犯人からオルホの匂いがした』と言うのです。」
「…それで?」
「この辺でオルホを取り扱っている店はありません。うちも普段は置いていないのですが、最近一度だけ仕入れた事があるんです。」
「つまりそれは…僕が店に来たあの日ってことですか?」
「えぇ、残念ながら。」
料理の準備が出来て、厨房から従業員が出てきた。
「その従業員さんの勘違いでは?」
「その従業員、お酒の仕入れをやっている藤田くんなんです。勘違いはないです。」
平泉がそう言うと、古田は藤田をちらっと見て言った。
「仮にそれが事実だとしても、それは僕じゃないですよ。」
古田がそう言うと平泉はニコリと笑った。
「そうですか。良かったです。料理ができましたので、ごゆっくりどうぞ。」
出されたのは、タイ料理のトムヤムクン。
古田はそれを黙々と食べた。
「美味しかったです。ご馳走さま。」
そう言って、古田が帰る準備をし始めると、平泉が近づいてきた。
「古田さん、藤田が謝りたいと言っておりましたので、よろしければ厨房の藤田に顔を出してあげてはもらえませんか?」
平泉がそう言うと、古田は快く引き受けた。
古田は厨房へ行き、古田のもとへと行った。
すると、藤田は言った。
「誠に申し訳ございませんでした。…ところで、なぜ私が藤田であるとわかったのでしょうか?」
「え?
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