第百九十七話 龍の勘その一
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第百九十七話 龍の勘
謙信はこの時金沢城を囲んでいた、その率いる五万の軍勢でだ。
敵を囲んでいた、その上杉の軍勢を城の中から見てだ。
浅井の家臣達は険しい顔でだ、長政に言った。
「強いですな、やはり」
「越後の龍だけはあります」
「いや、鬼の様です」
「まさに毘沙門天です」
「全くじゃ」
その通りだとだ、長政も家臣達に応えて言う。
「二万の兵と鉄砲がなければな」
「到底ですな」
「上杉は防げませんでしたな」
「この金沢城でも」
「到底ですな」
「そうじゃ」
それはとてもというのだ。
「防げなかったわ」
「とてもですな」
「この城は陥ちていましたな」
「上杉の攻めの前に」
「そうなっていましたな」
「そうじゃ、まことに強い」
長政は唸る様にして言った。
「御主達もいてこそじゃ」
「我等もいて、ですか」
「そうじゃ、兵が二万もおってな」
「そして鉄砲と兵糧もあり」
「この城であるからですか」
「そうじゃ、守れなかったわ」
これが長政の言うことだった。
「とてもな」
「左様ですか」
「では、ですな」
「この城を攻めれば」
「とてもですな」
「うむ、この城はな」
到底だというのだ。
「どれか一つが欠けても陥ちていたわ」
「そしてですが」
ここで磯野が長政にこう言って来た。
「間もなくですな」
「?どうしたのじゃ」
「はい、ここで守っていれば」
そうしていればというのだ。
「殿が来られますな」
「義兄上がじゃな」
「軍勢を率いて来られますな」
「武田との戦に勝ってじゃな」
「そうなりますな」
「いや、武田に勝ったならな」
長政はここでこう磯野の答えた。
「それは確実じゃが」
「殿が武田に勝たれることはですか」
「兄上ならば勝たれる」
このことは確信していた、長政は。
「武田にもな」
「そして、ですな」
「そうじゃ、勝たれた後はじゃ」
「殿はここには来られぬのですか」
「北に進まれる」
そこにというのだ。
「信濃からな」
「あの国からですな」
「義兄上は進まれる」
「そして上杉とですか」
「戦になる」
まさにだ、そうなるというのだ。
「だからじゃ」
「我等はですか」
「信濃から越後を攻められるのじゃ」
信長は、というのだ。
「それならばどうなる」
「はい、上杉の軍勢はです」
「本城を陥とさせられないので」
「それで、ですな」
「急いで越後に引き返し」
「そうしてですな」
「我等は助かる」
そうなるというのだ。
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