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山を越えて
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第一章

                      山を越えて
 ダグラス=マックローン大尉とマイク=ガンナー大尉はウエストポイントでは同期であった。今はパイロットとしてイタリアにいる。乗っている機体は輸送機だ。C−47というやたらと使われる輸送機のパイロットをしている。
 丁度ドイツが降伏した直後だ。戦争は何とか終わった。
 しかしそれで二人の仕事が終わったわけではない。基地の司令に呼ばれてこう告げられたのだ。
「君達の今度の任務はだ」
「休暇ですか?」
「それともボーナスですか?」
「それはこの仕事の後だ」
 下らないジョークには下らないジョークが返って来た。
「今回の仕事は輸送だがものだけでなくだ」
「人もですか?」
「それもですね」
「その通りだ」
 司令の言葉は実にシンプルだった。人員輸送もよくある仕事だ。二人にとってはこうした仕事はいつものことなのでそれを聞いてもまずは何とも思わなかった。
「頼めるか?」
「頼まなかったらどうなるんですか?」
「その場合は」
 二人の問いはまずそこからだった。
「頼んだらボーナスと休暇で」
「それを断ったら」
「特別休暇だ」
 司令の返答はこれであった。
「営巣でゆっくりと休んでもらうことになる。軍法会議で人に囲まれることは好きか?」
「いえ、女の子に囲まれるのならともかく」
「むさ苦しいおっさん連中に囲まれる趣味はありません」
 二人の今度の返事はこれであった。
「ですからそれは」
「遠慮します」
「よし、それならいい」
 司令は二人の言葉を聞いて納得した。そうしてだった。
「ではその人員だが」
「それは誰ですか?」
「将軍閣下で?」
「いや、多分君達が知っている人間だ」
 司令は二人にこう言ってきたのである。
「それもかなりな」
「俺達がかなり知っているっていうと」
「一体」
「ああ、来たな」
 ここで扉をノックする音が聞こえてきた。司令はそれを聞いて言うのだった。
 するとだ。二人と同年齢のアメリカ陸軍の士官の軍服を来た男が来た。それは。
「あれっ、オーウェンじゃないか」
「イタリアにいたのか」
 マックローンもガンナーも彼の顔を見て述べた。士官学校の同期でしかも階級も同じだ。その彼が入って来たのである。
「確か参謀になったんじゃないのか?」
「確か」
「それでドイツに行くことになったのだ」
 そうだったと話すのである。
「だからそれでだ」
「俺達がこいつをドイツに送るんですか」
「っていうと配属が替わったんですね」
「これまではローマにいたがドイツに行くことになった」
 このことも話された。
「それで君達に彼をドイツまで送ってもらいたいのだ」
「わかりました。それじゃあ」
「今すぐですね」
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