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101番目の舶ィ語
第八話。ジェヴォーダンの獣
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靴跡は一之江のものだ。
蹴られた事がある俺にはよく解る。
一之江の匂いもするしね。

「姫はここでおとなしくご観戦を。ああいうのと戦うのは俺1人でいいからね」

一之江の匂いや形跡が残っている事に妙に安心した俺はリサを床に下ろすとすぐ様村人達の方向に向かって駆け出した。

______『潜林(せんりん)』ッ!

駆け出した俺は村人が振りかざした斧を避けてから伏せるような姿勢で地を這うヘビのように移動しながら床に置いた包丁を両手に持って、その包丁で村人達の足のアキレス腱を斬りながら進んで行く。

「男性のみなさん、悪いがこれで成仏してくれ」

襲ってきたのは男性だけだったから遠慮なく代々遠山家に伝わる秘技を使って斬る事が出来た。
これが女性なら出来なかっただろう。
俺に足を斬られた村人達は赤い光の粒子となって霧散していった。
足の腱を斬っただけで消える……こんな事は今までなかった。
やはり『タッくん』や『ミーちゃん』と同じようにこの村人達はすでに死んでいるようだ。

「凄い、凄い!
村人達じゃあ相手にならないのかな?」

「諦めてくれるのかな?」

「まさか!
まだまだ村人達ならたくさんいるよ!
それにリサさんを連れてじゃあ逃げ切ることは出来ないと思うけど?」

「何故だい?」

「だって彼女、私と同じで『神隠し』さんを裏切れないもの」

「っ??」

リサは『神隠し』と聞いた途端、ビクッと震え出した。

「リサさんは『神隠し』さんに救って貰った身なんだから裏切れない、よね?」

「そ、それは……」

「それとも『神隠し』さんを敵に回す覚悟がリサさんにはあるんだ?」

「ご、ご主人様ならきっと『お嬢様』の事も助「そう、裏切るんだ」……はい。
リサはご主人様と一緒にいたいのです」

「ああ、一緒にいよう、リサ」

「勝手な事言わないで!
そもそもモンジさんが何者であってもリサさんを連れ出す資格はないよね?
関係ないあかの他人なんだから……貴方は。
それにリサさんははっきりいって戦闘の役には立たないと思うよ。
せっかく変身出来ても戦おうとしない人だし」

俺の事が気に入らないのか、ニコニコと笑いながらも俺とリサの間を引き離そうとする詞乃ちゃん。

「うっ、ご主人様……私……」

関係ないあかの他人と俺とリサを糾弾してくる詞乃ちゃん。
その言葉に傷ついたのかリサは涙目で俺の顔を見ながら何やら期待するように俺の顔を見つめてきた。

「それは違うよ!」

「ん? 何が違うの?」

「俺とリサは他人なんかじゃないからね。
俺はリサとある契約を結んでいるし、彼女を他の人に任せるつもりもない」

「でも彼女はロアになったんだよ」


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