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魔法科高校の神童生
Episode35:立ち込めしは暗雲
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に一人でいる方がよくない。適当に身支度を済ませて、隼人は部屋を出た。



「……なんとなく屋上に来たけど、なんでいるのさ?」

「隼人こそ、どうしてここに?」

 日本が世界に誇る霊峰。その全貌が見えるテラスを訪れた隼人は意外な人物に目を丸くした。

「俺は早く目が覚めて、なんとなくだけど…よっしーは?」

「僕もそんな感じかな…少し緊張しちゃってね」

 頬をかきながら苦笑いを浮かべる幹比古に、そういえば彼は結構な上がり症だったことを思い出す。

「…そっか。()()は久しぶりだもんね」

「うん…あの事故が起こる前に、隼人と一緒に戦って以来だから」

 幹比古はとある魔法事故によって優れた才能を失ってしまった。
 九十九と吉田の神童として過去に名を知られていた彼からすれば、今の自分は酷く情けなく見えてしまうのだ。

 だからこそ、今回のモノリス・コードは幹比古にとって大きなターニングポイントになるだろう。

「ねえよっしー…勝とうね」

 ならば幼馴染として彼に出来ることを。勝利に飢えている彼に、勝利の味を思い出させてやるのだ。

「勿論だよ。それと僕の名前は幹比古だ」

 互いに笑みを浮かべ合って、拳をぶつける。
 勝たなければならない理由が、一つ増えた。もう、負ける訳にはいかないのだ。

「……いつまでもウジウジしてらんないよね。よし、なるようになるし、チャンスが来たら力尽くだ」

 森崎との約束も。幹比古との誓いも。エリナの奪還も。
 これまで通り、力尽くで押し通せばいい。最善ではないだろう、しかし、隼人の中では最良の選択。貫き通すには、十分な自信がある。

「気合い入れてく!!」

 振り上げた拳を富士の霊峰に向けて、魔王は復活の声を上げた。



☆★☆★



 担当した競技で悉く上位を独占してきた忌々しいスーパーエンジニアと、圧倒的魔法力でクリムゾン・プリンスを打ち破った執事服の魔王。そして禁止されている物理打撃を行うはずの剣を所持するメンバーに、明らかに挙動不審のメンバー。
 それが、現在フィールドに立った一高メンバーに対する各校の大体の感想であった。

 さて、この例外中の例外であるチームがどのように戦うのか。無数の好奇心が向けられる中で、一高対八高の試合が開始した。

 八高との対戦ステージに選ばれたのは森林。
 第八高校は、魔法科高校九校の中で最も野外実習に重きを置いた学校であり、勿論木々が乱立する森林の中であってもその経験値は有効、むしろ彼らにとってホームグラウンドとも言える絶好のステージである。

 達也が「忍術使い」に教えを受けている事を知らない大多数は、一高が不利であると断定して、そのつもりでいた。
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