Episode35:立ち込めしは暗雲
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『命令』とは言い難い稚拙な指示だ。
だが、彼らにとってはそれだけで十分であった。
隼人のすぐ近くで待機していた15号が突如動き出す。
「…どうやら反省していないようだ」
機械仕掛けの人形のような動きで暗殺者との距離を詰める15号。その動きは不規則で、恐らく組織に改造される前は格闘技を修めていたに違いない。見た目の年齢に比べて、腕は立っていたようだ。
しかし、それは改造されて思考の大半を奪われてしまったことにより寧ろ改造前より劣る形となってしまっている。
「ここにいる存在全て、今この瞬間に殺しても構わないのですが」
そんな中途半端な実力しか持たない改造人間がこの暗殺者に敵うはずもなく、その存在は宙に空いた空間の裂け目に飲み込まれていった。
残されたのは、冷たい瞳をした暗殺者と、腰を抜かした老害、そして自我の殆どを失った機械達。
最早、声を出す方法すら忘れたのか。15号に命令を下した男はぱくぱくと口を動かすだけだった。物すら言えなくなったゴミを始末するため、黒い手袋に覆われた右手に短刀を握る。
「害しかないゴミを、そのままにしておく理由がないですものね。ここで一度、処理しておきましょう」
いざその喉笛を掻き切ろうとして、しかしそれは突如感じた悪寒と殺気により中断せざるを得なくなった。
「ーーさて、それは、困る」
すぐ様その場を飛び退き、射抜くような殺気を躱す。
途切れ途切れの独特なイントネーションに、隼人は心当たりがあった。
「…紫道聖一」
扉から部屋へ入ってくる朱色の制服を纏った男の姿を認めて、奴が明確な敵であることを隼人は確信した。
出会った時に浴びせかけられた尋常ではない殺気も、自分と同じ存在だというのなら納得できる。そして、一度『同じ』だと認識できてしまえば、その迫力に呑まれることはない。
「奴ら、は契約者なのでな。殺されて、しま、えば報酬が、貰えん」
「そんなのは知った事ではないのですが、ふむ、ここで貴方を討つというのもいいかもしれない」
しかしそれが脅威であることに変わりはない。自分と同じだというだけで、その存在は今回の中で一際大きな障害となるだろうから。
「さて、俺にばかり、気をとられ、ても、いいのか?」
「ッ!」
殺気。
背後から感じた僅かなそれに、思考の前に体は動き出す。
紫道聖一を視界から外すことはせず、半身になることで新たな闖入者の位置を確認。首を突きにきているのを認識して、自身と闖入者の間に多重障壁を展開し、凶刃を防ぎきる。
「っ!」
見えざる壁に阻まれた短刀を放り捨て、そして闖入者は左手に黒い物体を握った。
「拳銃…それにーー」
自身に向け
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