Episode35:立ち込めしは暗雲
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戦の裏。
無頭竜は、明らかに一高のみを狙っている。それが遺恨によるものか、それともギャンブルによるものかは知らないが。
だが、それさえ分かれば、九十九として奴らに制裁を与えるには十分な理由だ。
そして既に、無頭竜のアジトは絞り込めている。
「行くか」
消息を絶ったエリナのことも気になる。ならば善は急げと、隼人は制服から私服へと着替えた。
☆★☆★
隼人の加速魔法と雷帝の併用、極限にまで強化した脚力を以ってすれば、九校戦の会場から目的の場所までそう時間はかからなかった。
横浜中華街、某高級ホテルの屋上に降り立ち、そして隼人は眼の封印を解いた。
(下の階に、五人の非魔法師のサイオン波と、四人の魔法師のサイオン波……この魔法師はエリナの言っていた奇妙な魔法師、かな?)
標的の戦力を確認して、隼人は一度目を瞑った。
エリナの情報によれば、17号と呼ばれた魔法師は凄まじい加速魔法の使い手だという。
移動の時の消耗を引き摺ったまま勝てると思う程、隼人は楽観的ではなかった。
じわじわと消耗していた集中力が再び戻ってくるのを感じながら、後ろポケットに引っ掛けていた狐のお面を被る。
「さて、まずは挨拶といこうか」
ビルから飛び降り、減重・減速の魔法を使って落下の勢いを殺し、窓を蹴破った。
響く破砕音、あっさりと破壊された防弾ガラスに、中にいた男達は表情一つ動かすことができなかった。
「初次見面。無頭竜東日本支部の皆さん」
普段の彼に似つかわしくない気障ったらしい言い回しで、青の妖狐は仮面の奥で微笑みかけた。
恭しく頭を下げる暗殺者に、しかし男達の心中は穏やかではなかった。
「なぜ、青の妖狐がここにいる!?」
「ここがバレたというのか!?」
「そんな馬鹿な!」
面白い位に動揺する五人の男達。しかし、部屋の四隅に立っているスーツ姿の男達はなんの反応も示さず、無機質な瞳を闖入者へ向けている。
ああ、なんて醜いのだろうか。大の大人が、腐れ外道共が、ただの暗殺者に侵入された位でこれ程の恐慌状態の陥るとは。
全くもって気に食わない。なぜこんな奴らのせいで、摩利が怪我を負い、森崎達が生死の淵を彷徨わねばならないのか。
「少しばかりお巫山戯が過ぎるようなので、本日は忠告に参りました」
言葉を紡ぐ声は冷徹に。内心の怒りを悟られぬよう、暗殺者はその紅蓮の瞳で男達を睥睨する。
発せられる圧倒的なプレッシャー。本能から滲み出る恐怖感に、男達は脳内の焦りを加速させた。
「15号ッ! 奴を殺せッ!」
下されたのは極単純な命令。具体性の欠片もなく、凡そ
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