Episode35:立ち込めしは暗雲
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「…重傷よ。隼人くんが瓦礫を吹き飛ばしてくれたお陰で即死せずに済んだけど…あれが間に合っていなかったらーー」
その先は、言われずとも理解できた。
四高から屋内で破城槌を受けた森崎達三人は救助隊よりも早く駆けつけた隼人により救出され、一命を取り留めた。
しかし、三人とも予断を許さぬ程危険な状態。復帰は見込めない。自然、モノリス・コードは棄権することになってしまうだろう。
「…隼人くん、ちょっといいかしら」
「はい」
真由美に呼ばれて、隼人は視線を治療中の森崎達から外した。部屋を出て行く真由美についていく。
(…あの森崎くん達の状態を見て眉一つ動かさないなんて。やっぱり、隼人くんもあちら側の人間なのかしら…)
三人の容体は、酷いものだった。特に、二人を庇おうとした森崎の状態は酷く、隼人が発見した時は脇腹を鉄柱が貫通したり腕がひしゃげていたりしたという。
真由美や摩利、克人でさえ表情を歪めたその有様に、しかし隼人は反応を示さなかった。
まるで見慣れているかのように、こんな非日常の光景を日常だと言わんばかりに、隼人の態度は淡々としていた。
「…会長」
「わっ、な、なにかな?」
余程思考に囚われていたのだろう。隼人に声をかけられて飛び上がる真由美に小さく笑みを浮かべて、そして隼人は拳を握った。
「俺は、森崎くんとあの場で約束しました。絶対に優勝すると、君達の分まで戦うと」
「ーー!」
ああ、違った。彼は、何も思ってない訳ではなかった。
なぜならこんなにも、握り締めた拳は震えて、発する言葉には強い意志が宿っている。
「まだ、諦めたくないです」
こんなにも純粋な瞳を向けてくる彼を、壊れていると恐怖を感じた自分を、酷く恥じた。
「提案があるわ」
☆★☆★
真由美からの提案を受け入れた隼人は、彼女の好意を受け取って今日はもう休むことにした。とはいえ、夜にはまた再び真由美の下へ行かなければならないのだが。
自室に戻ってきた隼人は、力無くベッドへ倒れ込んだ。
「……もっと、俺の魔法が早ければ」
もしかしたら、森崎達はあれ程の大怪我を負わなかったかもしれない。
「消失が、あの状態で使えていたら」
彼らは無傷だったかもしれない。
もう、後悔はしたくなかったのに、またありもしない『もしも』の事を考えては自身を貶めている。
「分かっているさ。後悔ばかりじゃ、前に進めないって。だから、前を向かなきゃ……原因を、探るんだ」
一高に度重なる不慮の事故。それを、偶然だと決めつけられない程には隼人は調べを進めていた。
エリナから受け取った情報に、自分で調べたこの九校
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