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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『欠陥電気』
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ンダー》”ちゃん」
「……………………」


 照れ混じりに走り去り、無反応に落ち込みながら消えていった嚆矢を見送って。
 ルーズソックスの足に擦り寄っていた虎猫を、再び抱き上げた彼女は。


「…………はい、いいえ。またです、嚆矢」


 痛むように、苦しむように。嚆矢に向けて、そんな風に口にした……。


………………
…………
……


 自室に帰り、服を着替える。深緑のカーゴパンツと黒無地のTシャツに。一般的な休日スタイルの服を身に纏い、後は己の為すべき事を確認して。


「あら。こんにちは、嚆矢くん」
「あ、こんにちはです、撫子さん」


 日課の庭掃除をしていた和装の家主から挨拶され、会釈を返す。見れば、また仔猫が足下に戯れていて。


「そう言えば、今日の夕方に新しい店子さんが来るの。可愛らしい女の子よ」
「マジすか、俺、今日は夕方から用事があるんで……挨拶が楽しみだなぁ」


 少し残念に思いつつ、頭を下げる。返ってきた会釈に、再度頭を下げて。歩き出た道、人目と監視カメラの死角で。


「────ショゴス」
『てけり・り。てけり・り』


 呼び掛けに答え、空間を引き裂いて刃金の螻蛄が姿を現す。体長一メートル七十センチ強、全高九十センチもの、黒い刃が。それに、嚆矢は────


巡航形態(クルーズモード)走破二輪(ドライヴバイク)
《鉄馬か……佳い佳い、次は戦車か潜水艦、若しくは衛星兵器じゃな》
(手に入るか、ンなもン)


 ()()を掛ける。『螻蛄の七つ芸』が一つ、『走る』事に特化した形状に。即ち、嚆矢が扱い慣れた自動二輪車の形態に変型した螻蛄に跨がって。
 魔力を原動力とするその機関(エンジン)から咆哮を上げつつ、“悪心影(あくしんかげ)”と共に走り去ったのだった。

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