歌劇――あるいは破滅への神話
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に延びる廊下と合流した。壁沿いに右に進んだ。行き当たりに片開きの扉があった。開けるとまた廊下だった。建物の中は外観よりもずっと広いと理解した。
次の扉を開けると、白い列柱が延々続く広い空間に出た。かなり高い場所に、窓が並んでいる。青空と雲が見えた。見覚えがあった。
ネメスの大聖堂図書館のエントランスだった。
何故この場所に着いたか理解できず、ウラルタは混乱した。重い扉を押して、外に出てみると、大地はイグニスから出てたどり着いた時のような白い砂地ではなく、影たちの世界のように雪に覆われてもいなかった。丈低き緑の草が風に歌っていた。灰色の髪の老いた巫女が、山々を背に、思い詰めた表情で佇んでいる。巫女は呟きながら草の上を行ったり来たりし始めた。
「ならば月が……」
傍に寄り、聞き耳を立てる。巫女は手の中の羊皮紙を広げてペンで書き付けた。
〈狂女『ならば月が欲しい。月をくだされ』〉
「ならぬ」
巫女はなお呟く。
「月は光、光は闇……」
再び歩き始め、その肩が、ウラルタとぶつかった。巫女は振り返った。目があった。硬直するウラルタの前で、巫女の顔は恐怖に染まり、顔から血の気が引いて、唇がわななき出す。
その姿が不意に消えた。
音を立てて大聖堂図書館の玄関扉が開け放たれた。
狂女が両腕を広げて満面の笑顔で走って来た。
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