第7話「文句は面と向かって言え」
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しかしレイはそんな二人の光景を微笑ましく思う。双葉は銀時を見捨てたわけではなかったのだから。
坂田兄妹の他愛ない喧嘩が繰り広げられる横で、お岩はずっと自分を支えてくれたスタンド―TAGOSAKUを見上げた。生きてる時も死んでも尚自分を守ってくれた亭主を。
「あんたももういいよ。もう心配ないから……」
死んだ人間には二度と会えない。
それがこの世の摂理……なのにとんでもない我儘を夫に押しつけていた。
この束縛から夫を解放させる。……お岩はそう決心していた。
【……イヤダ……】
何のためらいなく告げる。
「え?」
思わず聞き返す。だがTAGOSAKUはかまわず告げる。
【言ッタハズダ。オ岩モ宿モ俺ガ……護ルト!】
そう発した途端、TAGOSAKUから霊力が暴発した。
一体何が起きたのか。
銀時が気づいた時には、お岩も新八たちも吹き飛ばされていた。
そしてTAGOSAKUに鷲掴みされている双葉の姿がそこにあった。
【……カエセ……ミンナ…カエセ……オイワ……ヤド…マモ……ル】
かつてない霊力の圧迫が双葉にのしかかる。さすがの彼女も耐えられない。
もがき苦しむ妹を目にして、銀時はレイを憑依させる。再び閣下化して、TAGOSAKUに突っ走った。
「コラァ!テメー!妹を離しやがれェェェ!!」
跳躍して叩きこんだ銀時の拳は、思いのほかTAGOSAKUにダメージを与え、双葉を助け出すことに成功した。
だが安心したのも束の間。
暴走するTAGOSAKUは里中のスタンドを吸収し始めたのだ。大量のスタンドがTAGOSAKUの身体に飲みこまれていく。
「あれは!?」
TAGOSAKUの背後の空間がぐにゃりと歪む。そこに生まれた裂け目から紫色の光が渦巻く。
【黄泉の門……!?】
驚愕の表情でレイが呟いた。
大量のスタンドを吸収して一か所に集まった負の情念が、この世とあの世の境目をなくし、黄泉の門を作り出した。このままだとこの世は黄泉の世界に浸食されてしまう。
しかしお岩を護ることに固執するあまり、TAGOSAKUは何も見えなくなっていた。
ただ、そのお岩の声でさえ届かなくなっていたのは、皮肉以外のなにものでもなかった。
――どうしてこんなことに……。
夫は女将との約束を護るために。ただ妻のために。
夫をあんな姿にしてしまったのは、紛れもなく自分だ。
「あんた……もういいんだよ。……もう眠っておくれ……」
そう呟くお岩の瞳からこぼれ落ちた涙。
それもそのままTAGOSAKUの身体に飲まれていった。
その時起きたことを一言で示すなら奇跡か。
お岩の涙がTAGOSAKUに飲まれた瞬間――急に彼の霊力は消え失せていった。
数百のスタンドたちも
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