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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第7話「文句は面と向かって言え」
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とは、天から与えられた能力だと思うようになった。
 仙望郷で亭主と一緒に行き場を失ったスタンド達を極楽へ届ける。
 笑顔で成仏していく彼らに自分も満足していた……はずだった。
 けれど夫を亡くしたあの時、気づいてしまった。
 自分の周りにはスタンドしかいないことに。
 スタンドを失えば、本当に独りぼっちなってしまうことに。
 そして襲ってくる孤独感に耐えきれず、スタンドたちを束縛してしまった。
 癒えない傷だの未練だのと言い訳にしながら。
――神に選ばれた人間?行き場を失った魂を救う?……なんて思い上がりだ。

『お岩。貴様は己がどれだけ恵まれているかわかっていない』

――……ああそうさ。私はずっと幽霊(スタンド)たちに支えられていた。
――あの子らはこんな私に寂しい思いをさせないため、ずっと傍にいてくれてたんだ。

【【【寂しくないよ。……みんな女将の心の中に……】】】

――ごめんね。ずっと……ずっと前から教えてくれていたのに……。
 けれど聞こうとしなかった。
 いつしかスタンドたちの声も届かなくなってしまった。
 だからスタンドたちの想いに気づけなかった。
 銀髪の女が彼らの声を届けてくれるまでは。

【【【【【みんなずっと一緒にいるよ】】】】】

 スタンドたちの声が凍えた心を暖める。
 それは優しいぬくもり。
 ずっとこのぬくもりに守られていた。
 だけど……

――ありがとう。もう大丈夫さ。

* * *

 凄まじい轟音が炸裂した後は、静寂が仙望郷の庭を包んでいた。
 庭には二つの人影。地に倒れる者とそれを見下ろす者。敗者と勝者。
 少なくとも銀時たちにはそう映る。彼らは元の姿に戻った双葉に、レイはお岩の元へ駆け寄った。
【女将!】
 レイは倒れた身体を起き上がらせる。だが負けたはずなのに、お岩は満足そうな苦笑を浮かべていた。
「レイ、すまなかったね」
【え?】
「私が情けないせいであんた達を縛りつけちまって……」
【なに言ってんのさ。私も、みんなも、女将が好きだからここにいたんだ】
 とても優しい言葉。だが同時に胸が苦しくもなる。
 苦行を強いてた自分をまだ支えてくれることに申し訳が立たない。
「……ありがとよ」
 溢れそうになった涙を必死にこらえ、お岩は心から礼を言った。
「……あんた達も」
 お岩は銀時と双葉にも感謝を向けるが、当の本人たちは小競り合いをしていた。
「おい双葉。テッメェ、いいとこ全部持っていきやがって。俺の出番ねーじゃねぇか!」
「出番ならあっただろ」
「どこだよ?」
「『やられ役』」
「ちょっと主人公の面目丸潰れなんですけどォ!」
 絶えない皮肉を口にする双葉にツッコミを入れる銀時。一見仲が悪そうな兄妹だ。
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