第6話 胸糞悪い現実と夢
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? 誰だ!? 俺のけつを触ったのは!!
痛みや背筋がゾワッとするのを我慢しながら、人混みを分けていくと、光を弾く白刃が見えた。牢人と思わしき男が町娘に刃を振り降ろそうとしている。
しかし、男と町娘の間に謙信様が割って入る。
男の刃を謙信様が抜刀し受け止める。
「この町にての不用意な抜刀は禁じている! 理由を説明せよっ!」
謙信様が刀を持つ手に力を込めながら怒鳴りつける。
「その女が難癖つけてくるからだ!」
男も怒鳴り返す。
いや、これどっからどう見ても男が無銭飲食して出て行こうとしたら町娘がお代を払うように言っただけだろ。難癖も何も言いがかりをつけているのは男の方だ。
全く、絵にかいたような理不尽だな。
こんなのがいるから世の中良くならないのだろうとつくづく思う。
「や、やかましい。武家に協力するのが民の役目だっ。金をせびろうとする方がおかしいのでないか!」
「何をのぼせた事を言っているのかっ! 私たちは民のおかげで生かしてもらっているんだ。私たちは民の為に尽くさねばいけない!」
「(え!? 武家の人間が生きてるのって民のおかげだったのか……。なるほど、謙信様が民を大事にする理由が分かった。俺も勉強が必要なようだ)」
男は顔色を変え、男は身を沈めると土を掴んで謙信様の顔目掛けて払った。
「な、なにっ……くっ」
謙信様が怯む隙に、男が逃げた。
俺と謙信様はすぐに男を追い駆けるが、その足はしばらくして止まった。
別に見失ったとかではない。男には追いついた。ただし、随分面倒な状況になっているのだ。
「悪いが捕まるわけにはいかないなぁ?」
「ううぅっ……えうくぅっ」
「卑怯な……」
追いついた時、男は子供を人質に取っていた。
女の子は泣いている。
「くっ。どうすれば……」
「謙信様、俺に任せてください。あいつの注意を逸らします」
謙信様に耳打ちし、俺は意識を集中する。
頭の中で風が渦巻くのをイメージする。
男の足元につむじ風を巻き起こす。
「な、なんだ――!?」
「今だ!」
男が驚き、子供から手を離した瞬間、謙信様は刀を構えて男に急接近し刀を振り抜く。
男の首が跳ね上がった。
「え……マジ……?」
俺は空を舞う男の首に口をぽかんと開けてみていた。
「ふう……大丈夫か?」
「う、あ……」
謙信様が女の子の無事を確認する。しかし、問われた女の子は恐怖に定まらぬ瞳を謙信様に向け、その場にへたり込んだ。衣装を血で染めた謙信様を、怯えるようにしてみている。謙信様は戸惑っている。
「うわあああぁぁぁっ!! ああぁっ……あああああぁぁぁぁんん!!!」
「大丈夫だ、辛かったろう?」
優しく声を掛けて謙信様が手を伸ばす。
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