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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第19話「Uへの道/奥義と恐怖と謎の男」
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と、男は先程の祝詞を繰り返す。
『腐れよ、病え、葬れや、怨めよ、魔を呼ばん』
ああ、それは聞き覚えのある言葉。
Dominaも、Dynamisも、Aπ?κ?λυψι? も。
男は確かに、あの軍服の男と同じように、我々の世界の言葉を使ったのであった。
…気がつくと、辺りは一面の赤、赤、赤。
熟れた林檎の色で満たされていた。
甘い香り、甘い香りが漂う。むせ返るほどの果実の甘い香りも。
禁断の果実、蛇の誘惑、楽園からの追放を暗示するその色と香りに囲まれて
イダは目を覚ました。
「…ええっと、おはようございます」
ゴン。
ポリポリと頬を掻きながら起きた娘に対して、無造作にリックが拳骨を放った。
「―――痛い。何すんのお父さん」
「痛いようにしたんだ」
「ごめんなさい…」
…概ね、自分が何をしたか、うっすらと気づいていたイダは、バツが悪そうに抗議して
それから小さく謝罪の言葉を紡いで父親の腕にしがみついた。
「バカ野郎。最後にとんでもないことしやがって。どうするんだ、この林檎の山…」
「あ、あはははは…」
甘えるようなしがみつきに、リックは強くは怒らず、イダの頭をなでる。
イダはそれに対してバツが悪そうに、乾いた笑い。
「よくやった。怖かったろう。あんなものが間近にいたら、生きた心地しないよな。
もうちょっと休め。あいつは、もうこないから。安心してな」
優しく、優しく諭すように父親は娘に語りかけた。
その言葉にイダははっとする。
―――そうだ。私だ。あいつは、私を狙ってたんだ。
…それが合図になる。堰を切ったように、体の震えが止まらなくなる。
ブルブルと全身が恐怖に震え、そして…言葉も制御できなくなっていた。
「どうしよう…どうしよう。怖いよ、お父さん、グウェン…わけわかんない」
どうしよう、どうしよう、わけわかんない、怖い。
震えが止まらない。涙までこぼれてきた。どうしよう。もうどうしようもない。
転生前、会社の別部署の大嫌いだった女性みたいだ、と思ったけど、
それでも涙も震えも止まらなかった。
そうだ。彼女は前世と今、あわせて50年生きた人間ではある。
だが、彼女の前世はただの旅行好きの女性で、今は宿の娘にすぎない。
…狙われるなど。それもあのような化物に狙われるなど、あるはずがない世界で
細々と生きてきた女なのだ。
盗賊たちに狙われている、というだけでも彼女の奥底には
ストレスが溜まっていたはずなのだ。
リックは気づいていた。気づいていたが、彼女が自覚するまで待った。
…恐怖を自覚できなければ、彼女に自分と同じ
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