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アセイミナイフ -びっくり!転生したら私の奥義は乗用車!?-
第19話「Uへの道/奥義と恐怖と謎の男」
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起こしたばかりの車は、往々にして漏れたガソリンによる火災を引き起こす。

それが故にイダは彼女の肩を掴んでその行為を止めたのだ。

エンジンが動いてないとはいえ、甘く見る訳にはいかない、と思った。

―――それは絶妙の判断だったと言わざるをえない。

熊が意識を取り戻したのだ。

「ガオオオオオオ!?!?」

ダメージは決して小さくはない。それは痙攣するように震える熊の四肢をを見ればわかる。

だが…それでも熊は吠える。緑銀の体毛にベッタリと血を張り付かせながら。

顔面にも胸板にも無残な衝突痕を残し、更に己の体重の倍はあろう重量物に押しつぶされ、

それでもまだ吠えた。その声には、まだ生命力が感じられる。

「操られているせい…か!クッ!」

回りこんでイダの方へ近づこうとしていたリックは、そう言って身構えた。

そうだ。この怪物はまだ死んではいない。死んではないなら、彼女にはもう打つ手がない。

後は、逃げるだけだ。だが、逃げるにしろ、方法がない。

熊から逃げる際の成功率を跳ね上げる下り坂はこのあたりには存在しない。

そして、たとえ下り坂があろうとも、この熊のような生き物が下り坂を苦手と

しているかどうかは全くわからなかった。

その逡巡を感じ取ったか、リックはひとつ頷くと

「全員、全力で逃げるぞ!!手負いの魔獣相手にこれ以上は危険だ!!」

と叫んだ。

それはイダの逡巡を打ち消し、ストランディンとフェーブルの腕を掴んで走り出した。

すぐに彼女たちも掴まれた腕を振りほどくように走り始める。

リック、グウェン、シドも同じだ。一目散に駆ける。

イダは一瞬振り向くと、弱々しくものしかかる車を退けようとするミスリルベアーを

一瞥した。

―――ためらってる、場合じゃない。やるしかない。

心のなかで僅かな逡巡を打ち消す。そして最後っ屁とばかりにあるものを投げた。

霊波バッグから出したそれは…ジッポーライターだ。

米国ジッポー社製の「最強のライター」。

かつては米軍兵に「GIの友」と呼ばれ親しまれたオイルライターである。

前世でもタバコを吸わなかった彼女だが、実の祖父のように慕った大叔父の形見として

それを所持していた。それに着火すると、心のなかで謝ってから、

猛風の中でも消えない炎を放つ物体を投げつける。

引火を期待してのことではあったが、そもそもガソリンはこういった開放空間では

引火しにくい可燃性液体である。

やはり、すぐに引火することはなく、炎が上がったのは、

イダたちが300m以上走った後のことだった。

おそらく、漏れ出て気化したガソリンにジッポーの炎が運良く触れたのだろ
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