29:涙の意味
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かっ……!?」
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「……………」
ズキリと痛む胸から喉へとせり上がってきた、その切実な問いは、ユミルを数秒沈黙させた。
だが……
「……言えない。だけど、ボクは、その目的の為ならば――…………殺せるよ。なんだってね」
返ってきたその言葉の異常な冷たさに、ゾクッと鳥肌が立った。
それにあたしは……継ぐ言葉も尽き、力無く俯いた。
しかし。
「……嘘です」
しかし、閉じていたはずの口から自然と出てきた言葉は、心意とは正反対のものだった。
「そんなことない。ボクは――」
「いいえ、それは嘘です」
再び、思わずそれを否定する言葉が出る。
それは何故か。
答えはすぐに分かった。
……そう、そうなのだ。
あたしには、彼の言うことは本当のことではないと教えてくれる『もの』が、すぐ傍にいるではないか。
――顔をあげろ。彼を信じろ。
そう言ってくるかのような『励まし』が、すぐそこから聞こえてくるではないか。
「なんで、そんなことが言えるの……? ボクは、こんな冷酷な人間なのに……?」
その言葉に顔を上げ、どこか悲しそうに問いかけるユミルをまっすぐ正面から見据える。
――そして手をあげ、自分の頬に擦り寄って『喉を鳴らす』、『ピナ』の額の上に指を乗せた。
小さく息を吸い、ユミルに告げる。
「……あなたは、この子を助けてくれた。抱きしめてくれた。そしてこの子も、あなたを信頼しています。そんな人が、あたしは冷酷な人だなんて思いません。今、決めました。――あたしは、あなたを信じます」
そして、ピナがきゅるーっ! と大きく鳴いた。
「――…………!!」
それを見たユミルは氷の表情から一転……目を丸くして驚いていた。
だが、今まで何度も見てきたその顔と違い……今の彼の瞳は、何かの感情での涙で薄く潤み……
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そう。まるで……手を差し伸べられて、
――救われた。
そんな顔をしていた。
「…………〜〜ッ!!」
しかし。
すぐにそれは氷河からマグマが溢れるように、怒りの表情へと変貌し、徐々に歯を食いしばられていった。
「また、その目だ……!! 昨日から変わらない、ボクを信じきった目……!! なんでそんな簡単に、人を信じれるなんてことが言えるの……! なんで、突き放すボクを受け入れようとするんだよ……! ボクはっ……死神かもしれないんだよっ!? 疑えよっ!! そんな目で、ボクを見るなよッ!!」
ユミルは段々と声を荒げ、憤怒の顔であたしへと詰め寄った。
けど、あたしはなぜかこの時、微塵たりとも気持ちが
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